テーマ : 島田市

病院薬剤師、100人超不足 薬局と競争激化で採用苦戦 静岡県調査

 医療現場の人手不足が課題となる中、静岡県内の病院で働く薬剤師が100人以上不足していることが15日までの県の調査で分かった。病院関係者からは「採用がままならない」「薬局との競争が激化している」と切実な声が上がる。人材確保を後押ししようと、県は全国の薬学生を対象にした病院合同就職説明会を来年2月に初開催する。

調剤業務に当たる浅原慶徳薬剤部長。県内の病院で薬剤師が慢性的に不足している=9日、島田市立総合医療センター
調剤業務に当たる浅原慶徳薬剤部長。県内の病院で薬剤師が慢性的に不足している=9日、島田市立総合医療センター
県内の薬剤師数推移
県内の薬剤師数推移
調剤業務に当たる浅原慶徳薬剤部長。県内の病院で薬剤師が慢性的に不足している=9日、島田市立総合医療センター
県内の薬剤師数推移


 「希望通りの人数がなかなか集まらない」。島田市立総合医療センターの浅原慶徳薬剤部長(59)は薬剤師の採用の難しさを指摘する。毎年2~3人の薬剤師を募集しているが、定員に達しないケースが多く、採用ゼロの年もあった。
 在籍する常勤薬剤師は29人。育休や産休取得による一時的な不足を補えない状況が続き、「チーム医療を充実させるにはマンパワーが足りない」と話す。人材確保に向けて月額10万円の修学資金貸与制度も導入し、学生への周知を急ぐ。
 県が7月に県内170病院を対象に実施した薬剤師確保の実態調査では、回答した136病院の欠員数は計127人に上った。全体の3分の1に当たる46病院で薬剤師が不足していた。
 複数の関係者が理由に挙げるのは薬局との給与水準の格差だ。県西部の病院は「初任給の違いが大きい。物価高騰の影響もあり、好待遇のドラッグストアで働く人が多い」と採用面での苦戦を打ち明ける。医療現場では医師の負担を軽減するため業務の一部を他の職種に移すタスクシフトが進み、薬剤師不足に拍車がかかる。
 県は策定中の次期保健医療計画で、2029年度に病院薬剤師不足の解消を目指す。人材確保の目玉の一つに位置付けるのが24年2月23日に開く合同就職説明会だ。
 病院の採用活動はホームページへの掲載やハローワーク経由の発信にとどまるケースが多く、必要な情報が学生に届いていないと分析。最大で60病院の参加を見込み、全国の薬学生に病院薬剤師の魅力をオンラインで紹介する。米倉克昌薬事課長は「静岡で就職を考える学生と県内の病院をうまくマッチングさせたい」と意気込む。
 県内で唯一薬学部を擁する県立大。石川智久薬学部長は「病院薬剤師の不足は全国的な課題だが、使命感や向上心の強い学生が志望する傾向にある」と指摘する。医療現場で多職種連携が進めば病院薬剤師が専門性を発揮しやすくなるとして、「病院で働くやりがいを学生に感じてもらうことが重要だ」と話す。
 (政治部・森田憲吾) 県内の大半「少数区域」  厚生労働省が2023年に公表した病院薬剤師の偏在指標によると、県内は大半が「少数区域」に分類された。薬剤師の総数は増加傾向にあるが、病院と薬局の間で偏りが見られる。
 偏在指標は地域別の入院患者数や薬剤師の業務量、労働時間などから算出した。本県の病院薬剤師は0・66と全国平均を下回り、都道府県別で40位に沈んだ。県内八つの2次医療圏別にみると、西部(浜松、湖西両市)を除いていずれも少数区域だった。一方、薬局薬剤師の偏在指標は1・01で全国16位。半数の医療圏が多数区域となった。
 20年末の県内の薬剤師数は8485人。このうち薬局薬剤師は5194人、病院薬剤師は1479人だった。薬局薬剤師は10年前から1081人増えたのに対し、病院薬剤師は183人増にとどまった。

いい茶0

島田市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞