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親子でハマる野外音楽フェス♪ 心と体に開放感【NEXTラボ】

 開放的な空間で多彩なアーティストの演奏が楽しめる野外音楽フェスティバル(フェス)が、本格的なシーズンを迎えた。若者向けのイメージもあるイベントだが、近年は参加者の年齢幅が広がり、静岡県内会場でも家族連れの姿が増えている。新型コロナウイルス禍の中でも、主催者は世代を超えて愛されるフェスを目指し、子ども向け企画や過ごしやすさに配慮した運営に力を注ぐ。

混み合うエリアを避けて、子連れでステージを楽しむ夫婦=5月中旬、富士市の「FUJI&SUN」会場
混み合うエリアを避けて、子連れでステージを楽しむ夫婦=5月中旬、富士市の「FUJI&SUN」会場

 

増える家族連れ 過ごしやすく


 5月中旬に富士市の「富士山こどもの国」で開催された「FUJI&SUN(フジ・アンド・サン)」は、子ども向けの広大な遊び場が会場。イベントとしての企画に加え、動物への餌やり体験や大型遊具の開放など、既存の設備を使ったさまざまな遊びが定番で、親子連れの支持が厚い。

photo01 来場者を対象に開かれた親子バイク教室。小学生がバイクに初挑戦した=5月中旬、富士市の「FUJI&SUN」会場
 子ども対象のアクティビティも充実する。今年は初めて、ヤマハ発動機(磐田市)の協力で親子バイク教室を開催。バイク初挑戦の小学生たちが、保護者のサポートを受けながら基本操作を学び、実際に走行を体験した。
 会場では、この日が子どもの「フェスデビュー」と話す人も。5歳と2歳の息子をキャンプ用の簡易ベッドに座らせ、少し離れた場所からステージを楽しんでいた鈴木晋二さん(42)、紗織さん(32)夫妻=東京=は「フェスはずっと好きだったが、子どもができて控えていた。こういう場所なら子どもも楽しく過ごせると思って参加した」という。
 泊まり客用のキャンプサイトも、ファミリー用の大型テントに対応した広い区画がある。プロデューサーを務めるWOWOW事業局の前田裕介さん(45)は「小さな子どもがいても無理なく楽しめる環境と、子どもにとっても楽しい空間づくりを意識している」と語る。
 今年の来場者アンケートでは、5割近くが子ども連れを含む「家族連れ」と回答した。コロナ禍での中断を挟んで3回目の開催となったが、子どもを伴う来場者は「回を重ねるごとに増えている印象」という。

photo01 場内の丸太の遊具で遊ぶ親子。自然の中で伸び伸び過ごそうと参加する来場者も多い=4月下旬、富士宮市の「ゴーアウトキャンプ」会場
 コロナ禍でキャンプ熱が高まる中、音楽以上に親子での自然体験を求めて参加する人も多い。4月下旬、富士宮市のキャンプ場「ふもとっぱら」で開かれた音楽フェス「ゴーアウトキャンプ」は、普段から予約の取りにくい人気施設での開催とあって、充実したキャンプ道具を備えた家族連れの姿が目立った。
 家族用テントを新調し、夫と3歳の娘と参加した愛知県の自営業水越明子さん(34)は「家族でキャンプ泊のフェスに来るのが今年の目標だった。音楽も好きだが、それ以上にキャンプや自然に触れる楽しみが大きい」と、雄大な富士山の景色を満喫していた。
 2008年の初開催以降、ファミリー層の参加は増え続け、最近では全体の3分の1ほどが家族連れ。今回も丸太や竹を使った遊具で遊べるキッズフィールドのほか、親子向けのワークショップなどがにぎわった。
 実行委の深作雄司ディレクター(38)は「家族向けコンテンツはフェスになくてはならないものになっている。コロナ禍で制約はあるが、感染状況を見ながら今後も楽しめる仕掛けを増やしたい」と話す。

苦境から復活の兆し


 コロナ禍は音楽フェスに大きな打撃を与えた。音楽フェスの市場動向を調査するぴあ総研(東京)によると、国内で流行が始まった2020年にはほとんどのフェスが中止になり、19年に330億円あった市場規模は97.9%減の6.9億円に激減した。21年も、一部で開催方法を模索しながら再開する動きが出たものの、市場の8割が消失したままの苦境が続いた。
 今年はいわゆる「四大フェス」がそろって開催されるなど復活ムードが顕著だが、笹井裕子所長は「縮小開催が多く、市場規模はコロナ前の半分に達するかどうか」とみる。都内のイベントプロデューサーは「コロナ禍での現実的な運営規則ができつつあり、安心感も出てきたのでは。チケットの売れ行きが非常にいいフェスもあると聞く」と話す。

サッカーなど学び重視 御殿場「アコチルキャンプ」


photo01 トークショーで子どもの質問に答える鈴木啓太さん(右奥)ら=5月下旬、御殿場市の「アコチルキャンプ」会場
 富士山麓の御殿場市で開かれる「アコチルキャンプ」は家族連れをメインターゲットに、子どもの体験や学びを重視した企画を充実させる。教育番組で親しまれたタレントのステージや、トップアスリートから技術を学ぶ「チャレンジ」など子ども向けの本格的なコンテンツを用意し、来場者の75%を家族連れが占める。
 7回目を迎えた今年は5月下旬に開催し、キャンプとサッカー合宿を組み合わせた「サッカーキャンプ」を初めて実施した。小学生62人が、鈴木啓太さん(東海大翔洋高出)ら元日本代表選手の指導を受け、2日間で計4時間、みっちり練習に励んだ。
 夕暮れ時にはトークショーも行った。鈴木さんはサッカーに対する心構えなどを紹介。質問タイムではリフティングのこつを問われ、実演を交えて答えた。参加した児童は「元日本代表選手の目の前で話を聞けてうれしい」と目を輝かせた。
 出演者と観客が直接触れ合える環境もアコチルの特長。ステージと客席の間に柵はなく、最前列からは出演者に手が届くほど。出演後のアーティストが会場内で観客と交流するシーンも。実行委は「子どもに夢を持ち帰ってもらう。プロを目指すきっかけをつくれれば」という。

環境配慮のキッズエリア 吉田「頂―ITADAKI―」


photo01 木材を使った遊びがそろう「頂」のキッズエリア=2019年6月、吉田公園(HitoshiShojiさん〈ITADAKI CAMERACREW〉撮影)
 2008年から続く「頂-ITADAKI-」は、保護者同伴で中学生以下入場無料。根底に「音楽を愛する大人と一緒に、良質な音楽を楽しんでほしい」という主催者の願いがある。20、21年は新型コロナウイルス禍を受けて開催を見送ったが、19年は延べ来場者約1万7000人の約1割を子どもが占めた。
 吉田公園(吉田町)に会場を移した11年から子ども向けスペース「キッズエリア」を設けている。3年ぶりの今年は4、5の両日に開催。現地では今、準備が急ピッチで進む。間伐材を使った積み木コーナー、ボール遊びのほか、フェースペイントや竹明かり作り、規格外として廃棄される花「ロスフラワー」を活用したヘアアレンジ企画など、ファッショナブルなメニューがそろう。
 12年からボランティア仲間と同エリアに関わる谷田夏実さん(33)=静岡市葵区=は「毎年顔見知りの子どもが成長しているのを見るのが楽しい」と語る。常連のカップルが、第1子を連れてくることが何よりうれしい。
 子どもだけでなく、親同士の交流が生まれる場にもなっている。谷田さんは、同フェスの雰囲気の良さを実感している。

地域文化体験が定着 富士宮「朝霧JAM」


photo01 親子参加も多い本門寺重須孝行太鼓のワークショップ=2018年10月、富士宮市の「朝霧JAM」会場(同太鼓保存会提供)
 10月、富士宮市の朝霧アリーナなどで4年ぶりの開催を控える「朝霧JAM(ジャム)」。20年の歴史の中で、地域住民のボランティアが主体的に運営に関わり、地域の文化や伝統を意識した遊び場を創出している。
 会場にはボランティア団体「朝霧ジャムズ」が運営するエリアがあり、親子向けにものづくりのワークショップを開催するほか、市などの協力も得て地元の文化や産業、観光をPRする。
 地元に伝わる「富士宮囃子」や「本門寺重須孝行太鼓」のワークショップはすっかり定着し、同太鼓保存会顧問の渡辺大輔さん(48)は「親子で大きな音を出して演奏を体験できる貴重な機会。リピーターも多い」と話す。
 酪農が盛んな開催地朝霧高原の開拓史を紹介する講話も恒例だ。朝霧ジャムズのコアメンバーは子育て世代が多いこともあり、代表の堀内潤さん(54)=富士宮市=は「家族ぐるみでイベントを楽しむ空気がある」と話す。
 主催者側の取り組みでは、入場料不要の小学生以下を対象に、大人がチケットと引き換えに腕に巻くリストバンドの子ども版を配布し、好評という。

 

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