テーマ : 御殿場市

農泊、復調 宿泊者数、コロナ前水準に ミカン収穫 富士山湧水 資源「発掘」

 農山漁村を訪れて観光や農業体験などを楽しむ「農泊」の宿泊者数が、新型コロナ禍での落ち込みから回復傾向にある。農林水産省のまとめによると、2022年度の全国の宿泊者数は19年度比約22万人増の610万8000人。新型コロナの行動制限解除により、23年度も続伸が見込まれる。県内の宿泊者数も上向いており、各地の推進団体が独自の体験プログラムを打ち出して誘客を図っている。

宿泊客の永坂敏泰さん(中央)に朝食を提供する久米ゆきさん(左)。共有スペースでは久米さんの長男もくつろぐ=24日、浜松市浜名区三ケ日町のcoco-Rin
宿泊客の永坂敏泰さん(中央)に朝食を提供する久米ゆきさん(左)。共有スペースでは久米さんの長男もくつろぐ=24日、浜松市浜名区三ケ日町のcoco-Rin


 「三ケ日で雪が見られるなんてほんとに珍しいですよ」。24日朝、浜松市浜名区三ケ日町の農家民宿「coco-Rin」を営む久米ゆきさん(39)は、宿泊者に朝食の自家製パンを提供しながら笑顔で話しかけた。宿泊は2度目という自営業永坂敏泰さん(53)=愛知県知立市=は「ここはゆったりと過ごすことができ、久米さんの家族や他の宿泊者とふれ合えるのが魅力」と語る。
 久米さんはミカン農家の夫の実家を改装し、20年4月に農家民宿を開業。自然栽培ミカンの収穫体験や加工品作りが人気を集めている。コロナ禍での船出となり、1日1組の受け入れを余儀なくされたが、昨秋からは全3室のフル稼働が続く。需要拡大を受け、今春に町内で新施設の開業を予定している。
 県内には、農水省が採択する農泊地域が20地域ある。各地で宿泊施設や観光協会、JA、行政などによる協議会を組織して農泊を推進。地域振興の新たな起爆剤として、地域資源の掘り起こしに注力している。
 新型コロナの影響で、宿泊者数がピーク時から約9割落ち込んだ御殿場市農家民宿推進協議会では、昨年5月に初めて台湾からの研修旅行客を受け入れた。その後は訪日客の利用が相次いでいる。協議会は富士山の湧水や「ごてんばコシヒカリ」を使った地域ならではの体験プログラムを磨き上げ、国内外からの集客に本腰を入れる。
 県が認可する農泊施設(ホテル、旅館を除く)の22年度の宿泊者数も、国内客に限ればピーク時の19年度とほぼ同水準にまで回復している。県観光政策課の亀山阿由子主任は「今後はインバウンドや再訪者の取り込みが鍵を握る。県は各協議会への情報提供や地域間の交流促進などを通じて積極的に支援をしたい」と語る。(経済部・垣内健吾)

インバウンド、再訪者獲得に照準 静岡県、ネットワーク設立
 静岡県は24日、県内の農泊関係者による「県農泊ネットワーク会議」を立ち上げた。13の農泊地域、観光、行政関係者らが情報共有を図り、全県的な農泊推進に向けた基盤を強化する。
 ネットワーク設立の背景には、実施地域間の連携や取り組み全体の実態把握の不足といった課題がある。プロモーション活動や各種研修を行うほか、新たに取り組む地域を「農泊実施地域」として独自に選定し、裾野の拡大と支援の充実を進めていく。
 静岡市で開いた設立会議で国や県の担当者が農泊をめぐる現状を解説。県内各地の取り組み状況も報告され、農泊施設の担い手の高齢化や新規参入者の掘り起こしなどの課題を出席者全員で確認した。県観光政策課の山田司課長は「地域間連携で異なる体験や観光資源を組み合わせた、より魅力的な農泊を提供できると期待している」と話す。

いい茶0

御殿場市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞