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高速の駐車場不足 大型車運転手休憩で「取り合い」 静岡県内SA【迫る24年問題】

 静岡県内高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)で、大型車用の駐車場不足が深刻化している。平日の夜間を中心に慢性的に混雑し、長距離を走るトラック運転手が休憩時間を確保できず、枠外に駐車するケースも目立つ。残業規制が強化される「2024年問題」への対応が急務となる中、高速道路会社は駐車スペースの確保を急ぐ。

混雑する大型車用の駐車場。枠外に止めるトラックも散見された=11日、御殿場市の東名高速道上り足柄サービスエリア(画像の一部を加工しています)
混雑する大型車用の駐車場。枠外に止めるトラックも散見された=11日、御殿場市の東名高速道上り足柄サービスエリア(画像の一部を加工しています)


 11日夜、御殿場市の東名高速道上り足柄SAは多くのトラックで混雑していた。あふれた車両が通路や乗用車・バス用のスペースに止まり、駐車場を見つけられずにそのまま本線に向かうトラックも見られた。
 「平日は午後6時を過ぎると新東名駿河湾沼津SAより東側はどこも同じような感じ。駐車場の取り合いだ」。広島市と東京を月に5~6回往復するというトラック運転手(45)はため息をついた。「トイレすらままならないこともある。労働環境を改善しなければ働き手は集まらないだろう」と話した。
 駐車場不足の背景には、ネット通販の拡大などで荷物の量が増え、休息時間を確保する運転手が集中していることがある。深夜割引適用のため時間調整する待機車両もあるとみられる。SAやPAに駐車できなければ長時間の連続運転につながり、中日本高速道路は対策を強化している。
 足柄SAでは11月をめどに、大型車用スペースの一部で利用を1時間に限る実証実験を始める。都市近郊のSAやPAでは8時間以上駐車する車両も多く、運転手が休みやすい環境を整える狙い。駐車時間を判定する画像処理技術の導入も検討し、利用状況を調べる。
 駐車スペースの増設にも引き続き取り組む。新東名の駿河湾沼津SA(上り)では23年度冬ごろに146台から157台へ、清水PA(下り)では24年度夏ごろに77台から208台へと拡充する計画だ。
 ただ、物流業界からはさらなる対応を求める声が上がる。県トラック協会の佐野寛会長は「労働時間短縮のため高速道路を利用する比率が高くなり、駐車スペース不足の影響は大きい」と指摘する。「企業の自助努力だけではどうにもならない」と訴え、既存の駐車スペースの拡充とともに、運転手の休憩に特化したPAの整備の必要性を強調する。



中継拠点や駐車場予約システム 運転手負担軽減へ取り組み広がる  トラック運転手の負担軽減につなげようと、県内では中継輸送拠点の設置や駐車場予約システムの導入といった取り組みも広がる。
 新東名高速道浜松SAに隣接した「コネクトエリア浜松」(浜松市)は、遠州トラックと中日本高速道路が整備した中継輸送拠点だ。運転手が入れ替わるなどして積み荷を交換し、従来は1人の運転手が泊まりがけで運ぶ長距離輸送を、複数人で分担することで日帰り勤務が可能になる。
 このほか運転手1人で大型トラック2台分を輸送できる「ダブル連結トラック」を対象にした駐車場予約システムの実証実験も進む。運転手が休息時間を確実に確保できるようにして、労働環境の改善につなげる。
 東日本、中日本、西日本の3高速道路会社は2018年度から約3千台分の駐車スペースを増設したが、依然として混雑は解消していない。乗用車が大型車用のスペースに駐車するなど適正利用が図られていない実態もある。
 (政治部・森田憲吾)

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