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キリンのウイスキー工場50周年 富士御殿場蒸溜所 欧州12カ国で富士山麓産販売

 キリングループ国内唯一のウイスキー工場、キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所(御殿場市柴怒田)が11月に操業開始50周年を迎える。同グループは近年、富士山の伏流水と富士山麓の独特の気候を生かした製品の海外輸出を加速。今年10月以降、新たに欧州12カ国で販売を始め、輸出先は17カ国になる。

生産設備増強の一環で新設した蒸留器=御殿場市柴怒田のキリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所
生産設備増強の一環で新設した蒸留器=御殿場市柴怒田のキリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所
建て替えて収容能力を高めた熟成庫
建て替えて収容能力を高めた熟成庫
生産設備増強の一環で新設した蒸留器=御殿場市柴怒田のキリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所
建て替えて収容能力を高めた熟成庫

 標高600メートルに位置する工場で、地下100メートルからくみ上げた伏流水を仕込みに使う。キリンディスティラリーによると、富士山麓は「ウイスキー造りの理想郷」。伏流水は適度なミネラル分で雑味がなく、冷涼多湿な気候は熟成中の過度な蒸発を防ぐという。
 国内で手ごろな価格の製品販売に注力してきたが、日本製ウイスキーブームによる原酒不足を受け、海外販売強化に戦略を転換した。2020年10月に高級ブランド「富士」の輸出をフランス向けに始め、22年までに米国や中国を含む5カ国に拡大した。22年の輸出額は21年の5倍超に急増した。一方の国内は、もう一つの主力ブランド「陸」が好調。将来的には長期間熟成させた高付加価値の商品を国内外に展開し、コアなファンの取り込みを図る。
 今年からテレビCMに同蒸溜所の映像を使い、恵まれた立地や自然豊かな環境を発信する。「富士山のふもとにあるからこそ、おいしい製品ができると伝えたい。海外にもアピールしやすい」と押田明成社長。21年は4億円だった「富士」の売上高を30年に40億円にする計画だ。
 同蒸溜所ではチューハイ「氷結」とミネラルウオーター「自然が磨いた天然水」の受託製造もしている。
 (東部総局・矢嶋宏行)

生産設備増強、ほぼ完了
 キリンディスティラリーは、中長期的な需要増に対応するため2020年から続けてきた富士御殿場蒸溜所の生産設備増強をほぼ終えた。84億円を投じ、ウイスキー熟成庫の収容能力を1.2倍に高めるなどした。
 4棟ある熟成庫の1棟を建て替え、収容能力を3万樽から5万5000樽に高めた。個性の強い原酒づくりのため、小型蒸留器4基と木桶(おけ)の発酵タンクを新設した。
 麦芽のみを原料とするモルトウイスキーと、他の穀物も使うグレーンウイスキーを同時に生産できるようになった。両方を製造する大規模工場は国内唯一という。

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