大自在（３月２９日）夕刊
入社して三十数年。衝撃的な事件の多くを夕刊で報じてきた印象が強い。
宗教法人「オウム真理教」が東京都の営団地下鉄（現東京メトロ）で猛毒の神経ガスサリンを発散させ、多くの死傷者を出した１９９５年３月２０日の「地下鉄サリン事件」。発生からおよそ２カ月後にあった法人の教祖麻原彰晃（本名・松本智津夫）元死刑囚の逮捕や２０１８年７月の刑執行一報も夕刊だった。
喜ばしいニュースもあった。１９９２年のバルセロナ五輪。競泳女子２００メートル平泳ぎで、中学２年生だった沼津市出身の岩崎恭子さんが当時の日本記録と五輪記録を更新して金メダルを獲得した。「今まで生きてきた中で一番幸せ」。当時の快挙とこの言葉は今も記憶に残る。
記者活動でもさまざまな思い出がある。他社に先駆けた「特ダネ」を夕刊に出し、さらに続報を朝刊で報じた時には、他紙も含めて新聞の配達が待ち遠しくて仕方なかった。一方で他社に夕刊で先行され、デスクから「どうなってるんだ？」との叱責［しっせき］で夕方から取材にかけずり回ったことも数え切れない。
静岡新聞社は３月末で、夕刊発行を終了する。４月からは夕刊に掲載してきた特集を移すなど朝刊を刷新・充実させる。定期購読者向けに始めるデジタルサービスでは、ニュースをスマートフォンなどでいつでも、どこでもお読みいただけるようになる。
静岡県内の課題に迫る取材活動は変わらない。深く、正確に、速く伝える届け方に変え、皆さまにとって不可欠なツールを目指す。今後もご愛読いただけるよう準備を徹底したい。
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