あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 編集部セレクト

社説(3月16日)精神的DV被害 法改正機に対策拡充を

 政府は、配偶者や恋人への暴力、ドメスティックバイオレンス(DV)対策を強化するため、DV防止法改正案を閣議決定した。加害者の被害者への接近を禁止する保護命令の対象を、身体的DVだけではなく、言葉や態度で相手を追い詰める精神的DVの被害にも拡大する。今国会での成立を目指す。
 精神的DVは「長時間正座させて説教する」「相手の行動や友好関係を制限し自らの支配下に置く」など形態は多岐にわたる。生活費を渡さないといった経済的DV、性行為や中絶を強要する性的DVも精神的に被害者を苦しめる。内閣府によると、精神的DVの被害は、相談全体の約6割を占める。新たな対策を講じるのは当然だ。
 2001年施行のDV防止法は、身体的DVに加え、「心身に有害な影響を及ぼす言動」も暴力の形態として定めているが、精神的DV被害の対策は遅れていたと言わざるを得ない。法改正は一歩前進だが、今後も実態を踏まえた被害者の保護や救済の拡充に努めなければならない。
 保護命令は裁判所が被害者の申し立てに基づき、加害者に付きまといや繰り返しの電話連絡などを禁じる制度。現行法は、対象被害を身体的暴力のほか「生命や身体に対する脅迫」に限っている。改正案ではDV被害に「自由、名誉、財産に対する脅迫」を追加し、通院を必要とするような精神的被害があれば、保護命令を出せる。
 身体的DV被害を発見した医師や医療関係者は、その旨を相談機関や警察に通報することができると法は定める。身体的DVと比べて発見が難しい精神的DVの被害者を保護するためにも法改正を機に改めて医師らに理解と協力を求める必要がある。DVで精神的被害を受けても加害者を恐れて通院できないケースも想像できる。相談体制の強化と周知は欠かせない。
 法改正で保護命令に違反した場合の罰則を重くする。付きまといなどの禁止期間も半年から1年に延長するが、もっと長い間、加害者を遠ざけてほしいと思う被害者は多いのではないか。
 被害者と同居する子どもへの電話を禁じる。DVは児童虐待にもつながると指摘されてきた。子どもの前で配偶者に暴力を振るう「面前DV」も虐待として保護の対象になっている。面前での精神的DVも形態によっては子どもへの虐待になるだろう。
 身体的、精神的を問わずDVで負った被害者の心の傷はなかなか癒えないといわれる。生活再建の支援や心のケアまで関係機関が連携し、切れ目ない対策を考えたい。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

編集部セレクトの記事一覧

他の追っかけを読む