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緊急速報メールで読み上げられる地区名などの間違いはなぜ起こるのか? 解決策は?【NEXT特捜隊】

 災害時、自治体が指定エリアの住民らの携帯電話に宛て一斉に避難指示などの情報を送る緊急速報メール。命に関わる情報をいち早く入手できる貴重な手段だが、スマートフォンの音声読み上げ機能を使うと、メール本文に記載された避難対象の地区名などが実際の読み方と異なる形で「誤読」されるケースがある。今回のNEXT特捜隊は、この問題について静岡県内市町の状況などを調べた。
(生活報道部・草茅出)
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photo03 浜松市が送信した緊急速報メール。誤読が生じやすい地区名は平仮名表記にしている
浜松市 平仮名で発信 誤読防ぐ  >>スマホで異なる
 緊急速報メールは、自治体が各携帯電話会社と契約を結び、災害の情報を発信する仕組み。エリア内にいる人すべてが対象となるため、住民だけでなく居合わせた観光客らにも情報を届けられる。配信エリアは市区町村単位で指定が可能。本県の場合、県が構築したふじのくに防災情報共有システム「FU[ふ]JI[じ]SA[さ]N[ん]」を経由すれば1度の入力で大手4社からメールを送信できる。 photo03 静岡県の緊急速報メール送信の流れ
 2日深夜にフィリピン付近でマグニチュード(M)7.7の地震が発生し、県内に津波注意報が発表された際は県が注意を呼びかけるメールを送った。各地の水害や土砂災害でも活用されている。
 ただ、音声読み上げの精度はスマートフォンの性能によって異なる。自治体側のメールの入力時には、漢字の読み方の指定はできない。普段からスマホの操作やメール確認などで音声読み上げ機能を使っているという県視覚障害者協会の伊藤定善会長(68)=磐田市=は時折、読み方の誤りに気づく場合はあるものの、「最初から必ずしも完全ではないという前提で聞くようにしている。会員の多くも同じような認識を持っているのではないか」と話す。会員の間では緊急速報メールを補う情報入手方法として、「テレビのニュース速報のテロップを音声で聞けるようにしてほしい」といった声があるという。

 >>大半が変更なし
 静岡新聞社が県内全35市町の危機管理担当部署に取材したところ、「緊急速報メールの運用開始以降、送信が必要になるほどの災害がなかった」「過去に送信した際は本文に地区名の記載がなく、住民からの指摘は受けていない」などとして、現時点では特にメール本文の表記方法の変更などは検討していない市町が大半だった。
 県内で発信方法を工夫していたのは浜松市。市民から誤読の指摘があった地名については、2022年度にメールでの表記を平仮名に変更した。23年12月時点では芳川[ほうがわ]、江西[こうさい]など10の地名を対象としている。本来は漢字の地名を平仮名で表記していることについて、特に意見は寄せられていないという。静岡市も一部の地名で平仮名表記を検討している。 photo03 浜松市が平仮名で表記している主な地区名・町名
 浜松市危機管理課の松本文哉専門監兼課長補佐は緊急速報メールだけでなく、同報無線やテレビ、ラジオなど複数の経路で情報を届けるのが重要との認識を示した上で「今後も読み上げに関して指摘があれば、随時変えていきたい」と話す。

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