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特集 : NEXT特捜隊

静岡県はいったい何地方?③ 西南日本/フォッサマグナ/東北日本 動植物の分布それぞれ【NEXT特捜隊】

 日本のほぼ中央部に位置する静岡県。「いったい何地方なの?」という疑問を受け、静岡県がどの区分に入るのか調べるシリーズ第3弾は自然科学編。ふじのくに地球環境史ミュージアム(静岡市駿河区)の識者に取材し、地質や動植物の分布から見える区分を調べた。

2000万年以上前
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1500万年ほど前
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現在
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日本中央の大きな溝「フォッサマグナ」
 地質学の分野では、日本列島を南北方向に走る大きな溝「フォッサマグナ」より東側を東北日本、西側を西南日本とする考え方がある。フォッサマグナとは、日本列島の基盤地質が約2000万年前にアジア大陸から離れた以降に、東北日本と西南日本の間にできた深さ最大6000メートル以上の凹地。少なくとも600万年前頃までは太平洋と日本海を結ぶ水路となっていて、長い時間をかけて火山活動などを経て徐々に陸化したとされている。
  photo01 フォッサマグナ
 フォッサマグナの西端は糸魚川-静岡構造線(糸静線)。新潟県糸魚川市と静岡市の竜爪山周辺を結ぶ断層だ(安倍川付近という説もある)。東端は新発田-小出構造線と柏崎-千葉構造線にはさまれた地域などとされるが、諸説ある。
 地質学が専門の中西利典准教授(46)によると、東北日本の太平洋側や西南日本の基盤は主に1~2億年前の堆積岩類や火成岩類などであるのに対し、フォッサマグナは主に2000万年前以降のものであるという。
 この考え方に基づくと、静岡県内は糸静線より西の静岡市以西は西南日本、同線より東側はフォッサマグナに区分される。

フォッサマグナを境に異なる動物分布
 地質の区分は動物の分布に影響しているのか。昆虫分類学が専門の岸本年郎教授(50)は「動物の分布から、日本列島がフォッサマグナを境に分かれていた頃の片鱗(へんりん)を今でも見ることができる」と語る。
  photo01 「カメノコヒメトビケラ」(信州大学理学部 東城幸治教授提供)
 例えば、水生昆虫の「カメノコヒメトビケラ」は、北米とロシア、韓国、日本などに生息するが、世界を二分する系統群の境界がフォッサマグナにある。岸本教授は「この虫は山岳の源流域に生息してあまり移動しないため、フォッサマグナが海から陸化した今でも太古からの分布が大きく変わっていないと考えられる」と説明する。静岡県内には西の系統が生息している。

 岸本教授によると、この他にもフォッサマグナを境にして違いが見られる例はある。例えば、東側のゲンジボタルは4秒に1回、西側のゲンジボタルは2秒に1回光ることが知られている。静岡県などの境界域では中間的に3秒に1回光るホタルが確認されている。
  photo01 コウベモグラ(左)とアズマモグラの標本
 また、モグラでは主にフォッサマグナより西側にコウベモグラが、東側にアズマモグラが分布する。静岡県内には両方存在する。淡水魚類は東側に分布している種は少なく、静岡県が分布の東端となっている種もある。動物の生息分布では、西南日本要素のものが多いが、東北日本要素のものも見られるようだ。

「フォッサマグナ要素」の植物 photo01 フジアザミ(左)とマメザクラ(いずれも小山町提供)
 植物はどうか。植物分類学が専門の早川宗志准教授(38)は「植物は東西で明瞭な差はない」と話す。植物のタネは軽くて風に乗って遠くまで運ばれる種類などがあるため、フォッサマグナが海から陸となって以降、東西の種が互いに移動し合って違いがなくなっていったと考えられるという。ただ、火山岩の土壌が多い特徴から、「フォッサマグナ要素」と呼ばれる固有植物が知られている。フジアザミやフジザクラ(マメザクラ)などがその例だ。
 

まとめ
◆地質学には糸静線以西を「西南日本」、以東を「フォッサマグナ」とする考え方がある
◆動物の生息分布は、西南日本要素のものが多いが、東北日本要素のものも見られ、両者が交じり合っている。
◆植物は東西で明瞭な差はみられないものの、「フォッサマグナ要素」の固有植物が知られている。

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