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御前崎の長生きポニー「トラさん」 馬の40歳、どのくらい「長寿」と言えるの?【NEXT特捜隊】

 「ことしで40歳になる長生きのポニーがいます。どれくらい『長寿』と言えるのか、調べてもらうことはできますか?」

ことし40歳を迎えたポニーのダブルトラブルと世話役の佐藤久美さん=6月中旬、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ
ことし40歳を迎えたポニーのダブルトラブルと世話役の佐藤久美さん=6月中旬、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ
顔の白髪が目立つようになったダブルトラブル=6月中旬、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ
顔の白髪が目立つようになったダブルトラブル=6月中旬、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ
子ども用の乗用馬として活躍したダブルトラブル=1999年12月、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ(佐藤久美さん提供)
子ども用の乗用馬として活躍したダブルトラブル=1999年12月、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ(佐藤久美さん提供)
ことし40歳を迎えたポニーのダブルトラブルと世話役の佐藤久美さん=6月中旬、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ
顔の白髪が目立つようになったダブルトラブル=6月中旬、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ
子ども用の乗用馬として活躍したダブルトラブル=1999年12月、御前崎市のパロミノ・ポニークラブ(佐藤久美さん提供)

 御前崎市の乗馬クラブ「パロミノ・ポニークラブ(パロミノ)」の飼育員佐藤久美さん(51)から、静岡新聞社「NEXT特捜隊」に依頼が寄せられた。早速、調査を開始した。
 そもそも馬はどれくらい生きるのか。馬種にもよるが、馬の寿命は通常25~30年。諸説あるが、人間の年齢に置き換えるには3~4を掛けるという。40歳のポニーは、少なくとも120歳になる。
 6月、その馬「ダブルトラブル(通称トラさん)」に会った。黒鹿毛(くろかげ)の馬体に白髪が目立つものの、しっかりとした歩調。食欲旺盛で、干し草もよく食べる。乗用馬としては10年前に引退し、芝生の丘や厩舎(きゅうしゃ)でゆっくりと過ごす。
 ニュージーランド生まれのニュージーランドポニー。パロミノの創業者中島康宏さん(66)=現共同経営者=が馬の買い付けに同国を訪れた時、丈夫そうな体が目に留まった。来日は1989年2月。「生年月日1981」と記載された当時の記録が残る。
 体高123センチと小柄なトラさんは、子どもの乗用馬として活躍した。性格は「気が強く、わんぱく小僧そのもの」(佐藤さん)。練習中、激しい動きでまたがった子どもをよく落としたという。「うちで練習した子は、ほぼ全員トラさんの〝洗礼〟を受けた」と、来日当初から世話をする佐藤さんは笑う。うまく乗りこなせた子は大会で入賞した。
 全国の乗馬クラブが加盟する「全国乗馬倶楽部振興協会」に聞いたが、個別の馬の年齢については把握していなかった。県内の加盟クラブは17施設。すべてに電話し、トラさんより年上の馬はいないことが分かった。
 次に静岡市の日本平動物園を訪ねた。「40歳の馬は動物園でも聞いたことがない」とのこと。飼育員の藤森圭太郎さん(24)によると、日本平動物園の最年長馬は24歳。「いかに大切に飼育されているかが分かる」と驚いた。
 馬に詳しい椎名動物医院(千葉県)の院長で獣医師の椎名紀夫さん(62)によると、高齢馬の死亡原因で多いのは、運動器や消化器の疾患だ。高齢馬の場合、手術が成功しても、その後の手術侵襲で起立困難になるケースも多い。体の大きい馬は、立てなくなれば、生きていくのは難しくなる。椎名さんは「老化により、うまく食べられない高齢馬ほど病気になりやすく、命取りになる」と指摘する。
 トラさんはもともと体が丈夫で、これまで大きなけがや病気をしたことがない。加えて、歯の力が弱った今では、湿らせて消化しやすい干し草を食べている。体のトラブルの発生を未然に防ぐ工夫が随所にされていた。椎名さんは「高齢馬の健康維持には適切な給餌やストレスのない環境が大事。それを実践している管理者の努力が素晴らしい」と話す。
 「高齢の馬にはどう対処すべきか、トラさんから教わることは多い」と、世話役の佐藤さん。かつてトラさんに振り落とされた子が親になり、子どもを連れてトラさんに会いに来ることが増えた。多くの人からたっぷりと愛情を注がれ、驚きの長寿馬となったトラさん。「まだまだ元気でいて」と、佐藤さんは願う。
 (TEAM NEXT編集委員・尾原崇也)

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