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存続岐路に立つ町内会 支援始める市町も【NEXT特捜隊・続報】

 静岡市葵区の60代のパート勤務の女性から「町内会の新役員探しに苦労している」という声を受け、読者の疑問に応える「NEXT特捜隊」は先日、県内の町内会による役員の担い手確保に向けた取り組みをリポートした(⇒切実「町内会の役員探し」担い手不足どこでも)。加入率低下や担い手不足を背景に、存続が危ぶまれる町内会・自治会など「地縁による団体」を支援しようと、動き始めた静岡県内の市町があることが、その後の取材や読者の皆さんからいただいた情報で分かってきた。「町内会シリーズ」第2弾としてお伝えする。

◆従来の在り方を見直し

  photo01 納入された広報紙。スタッフが地域の見守りをしながら配布する=4月、藤枝市の藤枝江崎新聞店  

 負担軽減に向けて市職員による検討委員会を立ち上げた藤枝市では、これまで市が自治会・町内会に依頼してきた業務の見直しが始まった。

業務負担が重なり、町内会・自治会は担い手不足や加入率低下で岐路に立っている
業務負担が重なり、町内会・自治会は担い手不足や加入率低下で岐路に立っている

 毎月2回の広報紙配布のうち1回について、新聞販売店に新聞折り込みとポスティングの2種類での配布の委託を4月から始めた。さらに、各種委員の選定の一部は推薦から公募に切り替え。高齢化や資金不足が課題となっている草刈りなど河川の環境保全については、交付金を増額。持続可能な仕組みづくりのため官民の協議会も設立した。

 島田市では市、市自治会連合会、TOKAIケーブルネットワークが自治会のデジタル化推進の連携協定を締結。自治会の機器購入や通信費に市が補助金を出すほか、機器の使い方の講習会も開き、ウェブ会議を導入した自治会もあるという。

 

◆好事例を発信・共有

  photo01 「引継ぎガイドBOOK」と活動の好事例を紹介する「しずおか自治会マガジン」  

 静岡市は「里山くらしLABO」に委託して2020年に市内の全自治会・町内会などにアンケートを行い、現状や問題意識を可視化した。課題の1位に上がった役員の担い手不足をはじめ諸問題の解消に向けて今春、A4判8ページの「引継ぎガイドBOOK」を作成。役員の負担軽減や引き継ぎ円滑化のため、年間行事や業務内容を整理する具体的な手順を示した。
 活動の好事例を共有する「しずおか自治会マガジン」も市のウェブサイトで公開した。「月1回の公園清掃のときに会議も済ませる」「月例会は開催せず必要に応じて開催する」などの事例を紹介している。

 

◆自治体の支援は黎明期

 

 町内会活動の在り方を議論した総務省の有識者会議「地域コミュニティに関する研究会」が4月にまとめた報告書では、課題改善に有効な鍵として①地域活動のデジタル化②持続可能性の向上③NPOなど他の地域活動の主体との連携ーの3点に着目。全ての点において、市区町村による財政・人材などを含めた積極的な支援が必要とした。

 同研究会の構成員の一人を務めた合同会社フォーティR&Cの水津陽子代表は、町内会は古くから自治体や関係団体などからさまざまな依頼や委託を引き受けており、近年はその負担が増していると指摘。「近年課題となっている加入率低下や担い手不足の問題はこうした行政からの依頼事項の重さも大きく関わっているが、自治体にはその当事者意識が欠如しているケースも少なくない。行政における負担軽減の取り組みはまだまだ黎明(れいめい)期」と分析している。

 また、多くの自治体に当事者意識が欠如している理由は「自治体については各部署、担当から個々に五月雨式なお願い事がされ、全庁的に見ればさまざまな部署からいろいろなお願い事、協力要請、依頼、委託などが行われているが、縦割り行政の中ではそうした認識がない。また加入率低下や担い手不足については自治会などの担当課、同課の職員は認識しているが、他の部署では必ずしもそうした現状も理解していない。古くからお願い事をしていて、それが当たり前になっているから、それに対して疑問も持たない。どうして負担を軽減しなくてはいけないのか理解を促す必要があるが、そうした動きもまだ一部にとどまる」としている。

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