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居住支援法人の活動、実態「知ってほしい」 コロナ禍で需要増も運営厳しく【NEXT特捜隊】

 「低額所得者や高齢者、ひとり親世帯などの賃貸住宅入居をサポートする居住支援法人について知ってほしい。コロナ禍を経て相談件数が急増し、運営に困難が生じています」。読者の疑問や困りごとに応える静岡新聞社「NEXT特捜隊」に、静岡市清水区で居住支援活動を行う鈴木久義さん(48)から依頼が届いた。現状を知るため早速、鈴木さんが総括責任者を務める法人「WAC清水さわやかサービス」の支援現場に同行させてもらった。

資料を見ながら丸山さんと今後の相談をする鈴木さん(右)=静岡市清水区
資料を見ながら丸山さんと今後の相談をする鈴木さん(右)=静岡市清水区

 「仕事をくびになったとき、子どもがどうなってしまうのか、それが一番心配だった」。目に涙を浮かべて話すのは、静岡市清水区に住む日系ブラジル人の丸山フェリペさん(30)。引っ越したばかりの2DKのアパートには、最低限の家具が置かれていた。丸山さんは、静岡市の食品加工工場で派遣社員として働いていた。しかし3月上旬、派遣元から突然解雇を言い渡された。2024年9月までの雇用契約途中の、予告ない解雇だった。3歳の息子と派遣会社の寮で暮らしていたが、そこも3月末で退去するよう命じられた。新型コロナによる不景気の影響もあり、それまでの収入も月に10万円程度。「あす、息子に食べさせるものもどうしようかと、途方に暮れる毎日だった」と振り返る。
 そのような状況の中、静岡市の紹介でWAC清水を知った。鈴木さんが不動産会社と交渉。間に入って家賃の支払いを見守ることを条件に、入居審査を省いてもらい、丸山さんが受給している生活保護の範囲で支払える家賃に減額してもらったという。「鈴木さんが毎日忙しい中、自分のことを最後まで気にかけてくれたのがうれしかった」と丸山さん。今後、仕事探しに本腰を入れていく予定だ。
 WAC清水さわやかサービスによると、新型コロナウイルス流行前だった2018年度の相談件数は32件、入居は6件だった。感染拡大とともに相談件数は年々増え、2021年度は123件、入居は66件に上った。国土交通省の補助金を受給しているが、直近2〜3年は200万円ほどの赤字が続いている。鈴木さんは「多忙のため人員を増やしたいが、人件費を捻出できる見込みがなく踏み切れない」という。資金繰りの壁にも直面し、継続可能な体制確保に苦慮している。

 

 同省の調査事業「居住支援協議会調査ワーキング」で委員長を務める、日本大文理学部社会福祉学科の白川泰之教授は「国の補助金の配分の見直しと、特定の団体に負担が偏らない仕組みが必要」と話す。同省の補助金は、年間の予算が設定されていて、申請した全国の居住支援法人で分けあう仕組み。近年、居住支援法人が全国的に増え、1法人当たりの補助金が減っているという。白川教授は「各法人の活動の充実度に合わせて軽重をつけるなど、配分のあり方を議論する必要がある」と主張する。

 「市町村単位で福祉サービスが連携することも重要」。白川教授はそうも指摘する。例えば、福岡市では市社会福祉協議会が入居相談の窓口となり、入居後は民生委員が見守ったり、高齢者や外国人のサポートは市の専門部署が担ったりと業務を分散させているという。白川教授は「福祉の担い手である市町村が旗振り役になり、地域のニーズに合わせて柔軟に対応することが大切」と話す。

■家賃の支払い、孤独死が不安…入居制限の理由は

 「居住支援協議会調査ワーキング」が2019年度に全国の不動産関係団体や事業所を対象に行ったアンケートで、入居制限の理由を聞いたところ、低所得者世帯やひとり親世帯に対する理由は「家賃の支払いに不安」、高齢者世帯に対する理由は「孤独死などの不安」が挙がった。

 WAC清水では、入居者を1カ月に2度ほど訪問し、入居者の健康状態や生活上の不安がないかなどを確認する。生活が安定したら頻度を落とすが電話での相談は随時受け付ける。

 静岡市葵区の富士不動産はこれまで、WAC清水の依頼に30件以上協力してきた。入居者の家賃滞納や、近隣トラブルは1件もないという。富士不動産の前川るりこさん(52)は「配慮者の方には何かあったときにすぐ相談できる人が必要。その点、居住支援法人が間に入っていると安心感がある」と話す。

居住支援法人 賃貸住宅の契約が困難とされる「住宅確保要配慮者」に対し、入居相談や情報提供、入居後の見守り、生活サポートなどを行う。住宅確保要配慮者は①月収15万8千円以下の低額所得者②被災者③高齢者④障害者⑤子育て世帯⑥外国人などの住宅確保に特に配慮を要する者として国土交通省令で定めるもの、とされている。2017年に制定された住宅セーフティネット法に基づき都道府県から指定を受ける。静岡県内では22年4月現在、9団体が指定を受けている。

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