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特集 : NEXT特捜隊

JRと静岡鉄道 なぜ「草薙駅」だけ同じ名前?【NEXT特捜隊】

 JR東海と静岡鉄道の駅名で、なぜ「草薙駅」だけ、同じ名前なのでしょう―。静岡市清水区の男性(67)から、読者の疑問に応える静岡新聞社「NEXT特捜隊」に疑問が届いた。

漆畑勲さんの自宅にある桜井戸の灸の石碑。郷土史によると、治療を求めて遠方から訪れる人も多く、灸の痕は「駿河人の手形」と呼ばれたという=静岡市清水区中之郷
漆畑勲さんの自宅にある桜井戸の灸の石碑。郷土史によると、治療を求めて遠方から訪れる人も多く、灸の痕は「駿河人の手形」と呼ばれたという=静岡市清水区中之郷
桜井戸があったとされる場所は現在は道路になり、道沿いに水神社が残る。水神社のサクラの古木を見上げる漆畑勲さん(右)と嘉代子さん=静岡市清水区中之郷の水神社(写真・杉山英一)
桜井戸があったとされる場所は現在は道路になり、道沿いに水神社が残る。水神社のサクラの古木を見上げる漆畑勲さん(右)と嘉代子さん=静岡市清水区中之郷の水神社(写真・杉山英一)
水神社(かつて「桜井戸」があった場所)
水神社(かつて「桜井戸」があった場所)
漆畑勲さんの自宅にある桜井戸の灸の石碑。郷土史によると、治療を求めて遠方から訪れる人も多く、灸の痕は「駿河人の手形」と呼ばれたという=静岡市清水区中之郷
桜井戸があったとされる場所は現在は道路になり、道沿いに水神社が残る。水神社のサクラの古木を見上げる漆畑勲さん(右)と嘉代子さん=静岡市清水区中之郷の水神社(写真・杉山英一)
水神社(かつて「桜井戸」があった場所)


 >>「新」付くのでは?
 JRの静岡駅と静岡鉄道の新静岡駅、JRの清水駅と静岡鉄道の新清水駅。両社には同じ地名が入る駅があるが、いずれも静岡鉄道の駅名の頭に「新」が付く。
 両社によると、「静岡」「清水」の付く駅はJRの開業が先。「草薙」は静岡鉄道の開業が先だった。
 後設のJR草薙駅はなぜ「新草薙駅」としなかったのだろう。JR草薙駅の開業は1926(大正15)年。JR東海静岡支社に駅名の由来を尋ねてみたが「当時の資料が残っておらず分からない」との回答だった。
 他に手がかりはないか、追い掛けた。87年発行の冊子「草薙駅前広場建設記念誌」(草薙駅前広場建設委員会発行)を図書館で開くと、JR草薙駅の開設当時を振り返る地域住民の手記があった。
 「当時は、駅名を『草薙駅』とするか『桜井戸』とするかで、だいぶ騒いだそうです」
 さらに、桜井戸のそばに名灸(きゅう)があり、同駅新設で治療客が多く訪れ、旅館が建ったというエピソードも記されていた。
 桜井戸とは、名灸とは、何だろう。調べていくと、静岡市清水区中之郷の水神社に由来の看板が残っていると分かった。それによると、清泉が湧き、サクラの古木のあったこの地はかつて桜井戸と呼ばれた。江戸時代、そばに住む漆畑佐治右衛門氏が旅の行者から伝授された灸が腫れ物によく効くとして、「桜井戸の名灸」の名で広まったという。

 >>駅のそばに名灸
 同氏の子孫で、現在も同神社近くに住む漆畑勲さん(88)によると漆畑家は代々、「桜井戸灸療所」を営んでいた。82年に閉院したが「その後も灸を求める人が県外からも大勢訪れた」と振り返る。勲さんの妻の嘉代子さん(83)の手には今も「駿河人の手形」と呼ばれた名灸の痕が残っている。
 勲さんの父淳司さんは、祖父定一さん(ともに故人)とJR草薙駅の思い出を日記に書き残していた。
 「当時鉄道当局よりこの際草薙駅より桜井戸駅として発足したらどうかと話がありましたが、元来潔癖の親父は(中略)桜井戸にする事は私欲と思はルるので御厚意は感謝するがお断りすると家族に話されました」(表記は原文通り)。定一さんが駅設置の期成同盟会の委員長を務め、鉄道省に土地を寄付したとも記されていた。
 日記の内容については、JRでは確認できなかった。桜井戸は明治時代に枯れ、区画整理で姿を消した。現在は、水神社と石碑が残るのみだ。
 ちなみに、静岡鉄道によると、同鉄道にはかつて「桜井戸駅」が実在したらしい。今回の取材では、詳しい時期や経緯にまでは行き着けなかった。
 駅名決定の明確な理由にはたどり着けなかったものの、当時〝別案〟の存在があったという調査結果を疑問を投げ掛けてくれた男性に伝えた。「桜井戸という名の交差点は知っていたが、背景まで知らなかった。華やかだった桜井戸の歴史を語り継ぎたい」と話した。

 ■同じ場所の駅は同一名が多数派
 全国各地にある同じ場所の駅同士は名前を別にしているのか。鉄道ジャーナリスト栗原景さん(49)=東京都=は「同じ場所にある駅が別の駅名を名乗っている方が珍しい」と話す。確かに、県内でも三島駅(伊豆箱根鉄道)、吉原駅(岳南電車)、掛川駅(天竜浜名湖鉄道)など、JRと私鉄が同じ名前の駅は多い。
 栗原さんによると、首都圏は鉄道事業者にかかわらず、徒歩圏内の駅は同一駅名を名乗る傾向が強い。一方、鉄道事業者同士の競争が激しかった大阪では、大阪駅(JR)、大阪梅田(阪急電鉄、阪神電車)、梅田(大阪メトロ)など分かれている例もあるという。

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