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特集 : NEXT特捜隊

緩和ケア「生きるため」 つらさ和らぎ、支えに【NEXT特捜隊】

 

緩和ケアは『終末期』の宣告ではありません。私は闘うために受けています

 

 血液のがん「多発性骨髄腫」で闘病中の社会福祉士原田久美子さん(56)=浜松市西区=から、静岡新聞社「NEXT特捜隊」にメッセージが寄せられた。

オンライン取材に応じる看護師の吉川陽子さん(左)と原田久美子さん
オンライン取材に応じる看護師の吉川陽子さん(左)と原田久美子さん
WHO(世界保健機関)の緩和ケアへの考え方
WHO(世界保健機関)の緩和ケアへの考え方
オンライン取材に応じる看護師の吉川陽子さん(左)と原田久美子さん
WHO(世界保健機関)の緩和ケアへの考え方

 病が発覚した5年前から治療を続け、一時状態は落ち着いたが、昨年末に再々発。緩和ケアに支えられ、闘病を続けている。
 医師から緩和ケアを提案されると、もう治癒が見込めないと、ショックを受ける人もいると耳にした。「私の今を伝えることで、同じ境遇の人の心が少しでも軽くなれば」。そう願うようになった。
 同市中区の浜松医療センターに入院中の原田さんはオンライン取材に「緩和ケアは心身のつらさを和らげてくれた」と切り出し、自身の闘病と緩和ケアの歩みを振り返った。
 社会福祉士として日常生活を送るのが困難な人々も冷静に支えてきた原田さん。自分の感情はコントロールできると思っていた。緩和ケアを希望するか問われた入院時のアンケートでは「不要」と回答した。しかし、入院して数日、病気を受け入れられずにパニック状態に陥った。主治医の勧めで緩和ケアを受けることになった。
 緩和ケアは医師や薬剤師など多職種のチームで行う。原田さんを中心になって支えてくれたのは、緩和ケア認定看護師の吉川陽子さん。吉川さんはいつも背中をさすって話を聞いてくれた。「決して否定せず『そうだよね』とうなずいてもらえることが心地よかった。本当に寄り添うとはこういうことだと感じた」
 治療そのものの苦しみ、家事や仕事と両立するしんどさ。「家族にも言えない苦痛を吉川さんが受け止めてくれたからこそ、闘病してこられた」。病状が落ち着いた昨年は、病気で髪を失った人のかつら用に髪を寄付するヘアドネーションにも挑戦した。
 しかし昨年末、まさかの再々発。これまでとは違う薬を使い始めた。「副作用の影響で治療が止まる度に死を意識してしまう」。話す目に涙が満ちる。
 それでもまた、闘う気持ちに戻るのは成人したわが子のこれからを、少しでも長く見たいから。励ましてくれる同僚たちとまた働きたいから。
 「まだやり残したことがたくさんある。緩和ケアを受けて私は前を向く」

 

早期ケア 生活の質向上

 

 緩和ケアとは何か。世界保健機関(WHO)は1989年、緩和ケアを「治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患をもつ患者に対して行われる積極的で全体的な医療ケア」と定義していた。
 しかし2002年、「生命を脅かす病に関する問題に直面する患者と家族に対し、身体的、心理的、社会的などさまざまな問題を早期に見いだし的確に対応することで苦痛を予防したり和らげたりし、生活の質(QOL)を向上させるアプローチ」と定義変更した。
 日本緩和医療学会の木沢義之理事長=神戸大大学院特命教授=は「時期は終末期に限らず、患者の必要に応じて行うもの」と説明する。同学会のリーフレットでは、早い段階から緩和ケアを受けた場合、生活の質(QOL)が改善して予後に好影響を与えると紹介している。
 緩和ケア専門チームは医師、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、カウンセラーなど多職種で構成され、不安、治療費や仕事の悩み、死への恐怖など、身体の痛み以外のつらさに対応するのも特徴だ。木沢理事長は「がん以外の患者への緩和ケア提供体制の整備も課題」と指摘する。

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