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洋服に価値を加える「アップサイクル」に取り組む 立山都さん(静岡市葵区)【NEXT特捜隊 あの人に聞きたい】

 洋服を捨てるのでなく、本来の良さを生かして新たな価値を加える「アップサイクル」に取り組む立山都さん(43)。「彼女の活動の原動力が知りたい」と、静岡市葵区の女性から投稿が寄せられた。静岡鉄道古庄駅の北西約100メートル。幼稚園舎を再利用した建物の一角にある、立山さんの営む古着店「ものがたりを『着る』お店 choosy(チュージー)」を訪ねた。レトロ雑貨、ドライフラワーの甘い香り、色とりどりの古着。おとぎ話のような雰囲気の店内で、話を聞かせてもらった。

立山都さん
立山都さん
店内には色とりどりの商品が並ぶ
店内には色とりどりの商品が並ぶ
幼稚園舎を再利用した建物の一角にある「choosy」
幼稚園舎を再利用した建物の一角にある「choosy」
立山都さん
店内には色とりどりの商品が並ぶ
幼稚園舎を再利用した建物の一角にある「choosy」

 

服で新たな人生の物語


 友達とデザインがかぶらず、値段も手頃な古着がずっと好きでした。同時に、数十年たっても着られるほどきれいで良質な洋服が元の持ち主から手放され、古着となっていることが不思議でした。
 自分の好きな物を売ろうと古着の店を開きました。欧米のビンテージショップなどから仕入れた1970~90年代の品がメインです。お客さまには一生着られる洋服を見つけてほしくて、接客にはこだわっています。近況や好みを細かく聞いた上であえて、本人は選ばないであろう「実は似合う洋服」を提案します。今までとは一味違う洋服を着て知らない自分と出会い、新たな人生の物語を体験してほしい。「ものがたりを『着る』」という店名のゆえんです。
 

きれいな“ごみ”に衝撃


 国内の年間新規供給量の約9割に当たる79万トン弱の衣料品が事業所や消費者から手放される「ファッションロス問題」に関心があります。新型コロナウイルス禍で海外からの仕入れが止まり、国内から廃棄寸前の洋服を試しに仕入れたところ、とてもきれいな洋服が届きました。まだ着られるモノが「ごみ」として捨てられている現実に衝撃を受けました。
 そこで始めたのが「アップサイクル」。裁縫の得意な主婦たちに声を掛け、部分的な破損や汚れのため販売できなかった古着に新たな価値を加えてよみがえらせる取り組みで、これまでに洋服やアクセサリー約200点を販売しました。縫製士らと団体「アップサイクルプロジェクト」も今夏に結成し、イベントなどで衣料品の廃棄問題を啓発しています。
 

ファッションは平等


 在庫を格安で譲る企画「古着詰め放題」も好評です。商品の廃棄削減と、経済的に苦しい人の力になりたいという思い、両方をかなえられます。息子が生まれ、次世代に良い未来を残したいと思うようになりました。ひとり親家庭に育ち、生き抜く力は強いと自負していましたが、守るものができてさらに強くなりました。
 「都さんに薦められた服を着て、面接に受かった」「あの服のおかげで彼氏ができた」。お客さまの声を通じ、洋服の力を痛感しています。「衣食住」という言葉通り、すてきな服を着て気持ちを上げることは本当に大切。自信や余裕のない人がファッションで元気になれば、世の中が良くなるはず。どんな人もおしゃれを諦めることがない社会であってほしいです。

たてやま・みやこ 1979年、静岡市清水区生まれ。洋服販売員を経て、2016年にチュージーを開店した。店名は英語で「こだわりが強い」という意味。お客さまに気に入ったものを長く着てほしいとの願いを込めた。明るい髪色とカラフルな洋服がトレードマーク。ただ、本人は「商品の魅力を発信するプロ意識ゆえで目立つのは本当は苦手」と強調する。

 身近にいる変わった特技を持った人、ユニークな活動を展開している人、近所で知る人ぞ知る有名人…。多くの人に知ってほしい「あの人」をあなたに代わって訪ねます。情報と、聞いてみたい質問をお寄せください。

 

いい茶0

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