テーマ : 美術・絵画・写真

「存在」追求した人物描写 画家・山城道也さん(島田市)【表現者たち】

 油彩の大作がぐるりと囲んだ展示室。画家山城道也さん(47)=島田市=が御前崎市内で開催中の個展は、二紀展出品作を中心に、20代からの画業を振り返る構成になっている。「存在としての人物描写を追求する」と話す山城道也さん。ヒマワリ、オウムガイなど自然界のらせん状のものもよくモチーフに選ぶという=御前崎市の静岡カントリー浜岡コース&ホテル(写真部・坂本豊)
 「写実が基本だが、リアリティーを追求するというより、『存在』が表現できたらいい」。強く影響を受けたのは常葉学園短大以来の恩師、佐々木信平さん(1936~2017年)。中央画壇で活躍し、東欧の大地にたくましく生きる人々を捉えた作品で知られる。「研究室をのぞいては、制作過程を間近で見てきた」。山城さんもおのずと人物、群像表現をまねることからスタートした。
 屈強な西伊豆の漁師たち、少女の成長を10年間かけて追ったシリーズ。近年はわが子をモデルに、躍動する男児がしばしば登場する。「子どもは心身の変化が著しく、その変化が点になり、線になっていく」
 幼児の靴が並んだ靴箱も「人物のいない人物画」。靴の形、向きそれぞれに、子どもたちの存在が確かに感じられる。キャンバスの裏面を精緻に描いた「canvas」は、表の存在を自由に想像させる。幼児の靴箱を描いた「24」。子どもの靴はカラーで、大人の靴はモノクロで表現キャンバスの裏面をモチーフにした「canvas」
 個展の副題は「煙のようなもの」とした。「描きだすと、描きたいものがどんどん変わっていく。曖昧なところも出てくる。『明暗をはっきり、白か黒か』なんて割り切れない」。その曖昧さを幅広い色調で表現できるのがグレー。「対象物の陰影や輪郭も引き立てる。気づいたら圧倒的に多用している」と明かす。
 日々、静岡県内各地の絵画教室で教え、個展も年3、4回開く。そんな多忙さを力に変える。「創作には波がある。『えいっ』と挑戦して失敗することもよくあるが、どんな状況も絵に携わっていられるかが大切。その中から、じんわり面白い世界が広がっていったらいい」と笑顔を見せる。
 (教育文化部・岡本妙)

 「山城道也展~煙のようなもの~」は26日まで、静岡カントリー浜岡コース&ホテル(御前崎市)で。

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