テーマ : 美術・絵画・写真

柱なし「片持ち梁」構造 「沼津アーケード名店街」編②【アートのほそ道】

 「沼津アーケード名店街」(沼津市町方町)の「有階アーケード」を歩くと、歩道の上の居住スペースを支える柱が少ないことに気づく。

車道側の屋根を支える柱がない「沼津アーケード名店街」第1ブロック=沼津市
車道側の屋根を支える柱がない「沼津アーケード名店街」第1ブロック=沼津市
沼津アーケード名店街 有階アーケードの断面図
沼津アーケード名店街 有階アーケードの断面図
車道側の屋根を支える柱がない「沼津アーケード名店街」第1ブロック=沼津市
沼津アーケード名店街 有階アーケードの断面図

 工期前半の1953年12月に完成した南西部分の「第1ブロック」は、特に分かりやすい。全長約70メートルに1872年創業の「水口園茶店」をはじめ13店舗分のスペースが連なるが、車道側には柱が一本もない。非常に大胆な建築デザインだ。
 県ヘリテージセンター長で1級建築士の塩見寛さん(70)=同市=は「カンチレバーで造られている」と解説する。片持ち梁[ばり]と和訳される構造で、梁の一方が固定され、反対側は固定されない。開放的な歩道を造るために採用したとみられる。
 有階アーケードは、幅12・5メートルの車道の両側に片側3・75メートルの歩道を創出するために採用された。同じデザインは後年完成の清水銀座商店街(静岡市清水区)でも見られる。だが、静岡理工科大理工学部建築学科の脇坂圭一教授(51)は「沼津アーケード名店街は、歩道が公有地、上階が私有地という、所有と管理の二重性がある」と特殊性を指摘する。
 県と沼津市の資料「商店街の不燃化 沼津防火建築帯」によると、沼津の異例の措置は、約1年にわたる建設省との交渉を経て実現している。理想の街路を手にするための、地元の人々の熱意が伝わる。

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