水を求め　冒険の旅　鳥山明「ＳＡＮＤ　ＬＡＮＤ－」配信開始（氷川竜介／アニメ研究家）

　「ＤＲＡＧＯＮ　ＢＡＬＬ」などのヒット作を生み出した希代の漫画家、鳥山明が３月１日、６８歳の若さで亡くなった。くしくも訃報から程ない３月２０日、鳥山が原作のみならず、新作にも深く関わったアニメ「ＳＡＮＤ　ＬＡＮＤ：ＴＨＥ　ＳＥＲＩＥＳ」の世界独占配信が、動画配信サービス「ディズニープラス」内のブランド「スター」で始まった。

「ＳＡＮＤ　ＬＡＮＤ：ＴＨＥ　ＳＥＲＩＥＳ」の一場面（写真は共に（Ｃ）バード・スタジオ／集英社　（Ｃ）ＳＡＮＤ　ＬＡＮＤ製作委員会）

　主な舞台は、深刻な水不足に悩まされる砂漠の世界「サンドランド」。保安官のラオは渇きに苦しむ人びとのため、「幻の泉」を求めて出発する。同行者は悪魔の王子ベルゼブブと魔物のシーフだ。冒険の旅を進めるうちに、水を独占する国王とその背後にある陰謀が明らかになっていく。
　悪魔たちは強い力や特殊能力を持っているが、決して非道なことはしない。力を合わせて苦難を乗り越えているうちに、ラオとベルゼブブたちが互いを認め合っていくプロセスはとても心地よい。そして水不足が仕組まれた陰謀であることや、過去にあった、ある悪事が明らかになるにつれ、人間の本質とは何か、深く考えさせられる。
　メカ類が多数登場するアクションアニメとしても一級品だ。特に球形をした戦車のバトル描写はミリタリーマニアも納得のもの。３ＤＣＧと作画とのハイブリッドで制作され、独特のキャラクターと世界観を絶妙に再現している。
　２０２３年８月に公開された劇場版に新たなシーンを加え、テレビサイズ（約２４分）に分割した全６話の「悪魔の王子編」に続き、鳥山が物語を考案した完全新作「天使の勇者編」が始まった。翼のない天使ムニエルと謎の少女アンといった新たなキャラが加わり、緑豊かなフォレストランドを舞台に冒険が描かれる。鳥山の才能の豊かさを、ぜひ見届けてほしい。
　（氷川竜介・アニメ研究家）

　