テーマ : 美術・絵画・写真

言葉で、余白で、すくう感情 詩人ゆずりはすみれさん(静岡市葵区)【表現者たち】

 雨上がりの公園、帰り道に見上げた空、赤ちゃんの掌[てのひら]-。詩人ゆずりはすみれさん(36)=静岡市葵区=が紡ぐ詩は、日々の生活や目にした景色から抱く感情、感覚を言葉ですくい上げる。

日々の気付きから詩作するゆずりはすみれさん。ワインバーとの共同企画で、四季ごとに1編の書き下ろし作品を紹介している=静岡市葵区のカーヴ・リトロン(写真部・杉山英一)
日々の気付きから詩作するゆずりはすみれさん。ワインバーとの共同企画で、四季ごとに1編の書き下ろし作品を紹介している=静岡市葵区のカーヴ・リトロン(写真部・杉山英一)
新装版の詩集「かんむりをのせる」(右)と、年1回発行する詩誌「いちがつむいか」
新装版の詩集「かんむりをのせる」(右)と、年1回発行する詩誌「いちがつむいか」
日々の気付きから詩作するゆずりはすみれさん。ワインバーとの共同企画で、四季ごとに1編の書き下ろし作品を紹介している=静岡市葵区のカーヴ・リトロン(写真部・杉山英一)
新装版の詩集「かんむりをのせる」(右)と、年1回発行する詩誌「いちがつむいか」

 神戸市で生まれ育ち、中学生のころ、日々の思いをSNSに書きつづっていた。「日記のつもりが『詩ですね』と言われ、私が書くものが詩だと気付かされた」。2011年、職を得て静岡へやって来た。20年、詩の月刊誌「ユリイカ」で、「ユリイカの新人」に選ばれた。

いつか 手向けられた花にも
ひとしれず いのちがあった
そのいのちのあとに続くものを
いま と呼ぶなら
  (詩集「かんむりをのせる」新装版の「緒の詩」から)


 詩作は、全て平仮名で書いてから。「意味を明確にしたい時は漢字に」。直感で選び取っていく。詩集の他、詩誌を年1回発行し、ウェブやフリーペーパーでも詩やエッセーの発表を続ける。与えられた主題で創作する機会も増えた。
 「散文は言葉を尽くして表現する。詩は言葉を失っていくうちに残る言葉で表現しようとする」。生まれた余白も詩の一部。「書かれている言葉と、書かれていない言葉を同時に受け取りながら感じていく」

わたしの口をふさいでも(川は流れ続ける)
わたしの手をくくっても(川は流れ続ける)
わたしの目をおおっても(川は流れ続ける)
わたしの足をくじいても(川は流れ続ける)
 (「水辺」から)


 アフガニスタンのタリバン暫定政権による「詩作禁止令」に対し、ことし2月、亡命詩人が抗議の詩作を世界へ呼びかけた。ゆずりはさんが寄せた「水辺」も、8月刊行のアンソロジーに加わる。「詩が自由に書ける、言葉を自由に使える。その『当たり前』が、どの土地でも当たり前であってほしい。社会の問題について自分がどう向き合うか、意識するようになった」
 日常に軸足を置くスタンスも変わらない。「書き上がって『いい詩だな』と感じられる美しい詩を作っていきたい」と語る。
(教育文化部・岡本妙)

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