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「アマリリス」 大きな手 しなやかさの象徴【新発見で探る 夢二㊤】

 叙情豊かな美人画で知られる画家、竹久夢二(1884~1934年)が描いた油彩画やスケッチが新たに見つかった。折しも今年は夢二生誕140年、没後90年の節目。夢二のさらなる魅力を探る機会になりそうだ。

宮武東洋撮影《夢二ポートレート》夢二郷土美術館蔵
宮武東洋撮影《夢二ポートレート》夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《アマリリス》夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《アマリリス》夢二郷土美術館蔵
宮武東洋撮影《夢二ポートレート》夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《アマリリス》夢二郷土美術館蔵

 膝上に本を置き、たおやかな様子で座る着物姿の女性。大きな赤い花が髪飾りのように配され、見る者に華やかで優美な印象を与える。岡山市の夢二郷土美術館が新たに収蔵した油彩画「アマリリス」は、1919年ごろに描かれた中期の作品だ。
 憂いを帯びた表情と大きな手に、「夢二式美人」の特徴がはっきりと表れる。小嶋ひろみ館長代理は「従来の美人画では手足をなるべく小さく描くが、夢二はあえて大きくした。大地を踏みしめ、しなやかに生きる女性の芯の強さを表現したかったのではないか」と解説する。女性は職業モデルで、後に恋人になったお葉とみられる。19年9月、夢二自身が会場作りに関わった「竹久夢二抒情画展覧会」(福島市)にも出品されたことが、当時作品図版を掲載した福島民報の記事などから明らかになっている。
 絵は、夢二が18年11月から2年半ほど滞在した東京・本郷の菊富士ホテルのオーナーに贈られた。思想家の大杉栄や作家の谷崎潤一郎ら文化人も出入りしたホテルの応接間に掛けられたが、44年に閉館した後の所在は不明だった。
 同館は2022年12月、研究者から情報を得て都内の画廊で購入。現存する夢二の油彩画は約30点と少ないだけに、今回の発見は貴重だ。小嶋館長代理は「初期や晩年の油彩画と比べて色使いなどが違う。中期ならではの特徴を知ることで、画業の変化をたどることができる」と、今後の研究も見据える。
 女性と花がほぼ同じ大きさで、一体化しているのも他の美人画と異なる点。テーブルと鉢植え、コーヒーカップとソーサーの円形が効果的に配置されているのも独自性が高く、構図の工夫も見どころだ。
 「アマリリス」は、6月1日に東京都庭園美術館で開幕し25年夏にかけて全国を巡回する「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」で公開される。

 

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