テーマ : 美術・絵画・写真

雲上に浮かぶ 聖なる山 「富士山」編③【アートのほそ道】

 写真家の石川直樹は1977年東京生まれで、祖父が芥川賞作家の石川淳だ。

Mt.Fuji#38(石川直樹) 2008年(県立美術館蔵)
Mt.Fuji#38(石川直樹) 2008年(県立美術館蔵)

 20代の初めから今日まで、地球の北極点から南極点までの縦断人力踏破や、伝統的な航海術と手製カヌーを使ったポリネシア・トライアングル航行などを敢行した。未開の地に分け入って自分の足跡を記録に残そうと、標準レンズとフィルム用中判カメラにこだわりながら、写真とともに多くのエッセーを発表してきた。
 石川は30回以上、富士山に登っている。その多くはエベレスト登山などでの高所順応を兼ねたものだった。彼の富士山写真は、雪で覆われた厳しい山肌とともに、富士山信仰の祭りなど、自然とともに人間の営みを記録として残したものも多い。
 富士山の本当の魅力は、遠くから眺めてもわからないと石川は語っているが、作品「Mt. Fuji #38」は、遠くから眺めた雲上に浮かぶ美しい富士山の写真だ。
 私は、富士山が世界遺産登録の可能性が高まった2013年に、石川を誘って、三保半島の海抜0メートルの真崎海岸から富士山頂までの高低差3776メートルを、カヌーと徒歩で縦断する計画を実現させた。
 さらに今年の3月、私は石川が愛してやまないエベレスト街道に、山岳ガイドのシェルパ・ダ・ツェリ氏を誘って、2度目となる調査登山に出かけた。
 エベレスト街道では、チベット仏教の信仰の証しとなる仏塔、マニ石、マニ車、タルチョなどを至る所で見かけた。世界遺産である「聖なる山」と敬われる富士山とエベレストの共通性を、改めて知ることができた。
 (本阿弥清・美術評論家=静岡市清水区)

いい茶0

美術・絵画・写真の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞