テーマ : 美術・絵画・写真

「秘密の森の、その向こう」 少女の不思議な出会い【名画の歳時記②】

 読者の皆さん、大型連休をどのようにお過ごしでしょうか。どこかへ(映画館?)出かけられますか? それともお家で何かご覧になりますか? 今日は「みどりの日」そして明日は「こどもの日」。ということで今日は、緑の森の中で不思議な出会いをする子供たちを描いた「秘密の森の、その向こう」(2021年)をご紹介します。

「秘密の森の、その向こう」 (c)2021 Lilies Films/France3Cin〓ma
「秘密の森の、その向こう」 (c)2021 Lilies Films/France3Cin〓ma

 8歳の少女ネリーは、森の中に建つ、おばあちゃんの家を訪ねます。おばあちゃんが亡くなってしまったため、両親が遺品の整理をする間、滞在するためです。ですが、少女時代をその家で過ごしていたママ、マリオンは思い出と悲しみに押しつぶされそうになり出ていってしまいます。パパと二人だけで家に残ったネリーは、ある日森の中で自分とよく似た少女に出会います。その少女も8歳で、彼女の名はマリオンでした。
 ネリーはすぐに、その少女が誰なのかを悟ります。それは8歳の頃のママだったのです。二人はすぐに仲良くなり、やがてネリーはマリオンの家に遊びにいくことになります。行ってみると、そこはネリーが今滞在しているのと同じ家でした。そしてネリーを迎えてくれたのは…。
 世界中で旋風を巻き起こした衝撃作「燃ゆる女の肖像」(19年、日本公開20年)のセリーヌ・シアマが監督・脚本を手がけています。フランス映画ですが、日本人である僕たちが観[み]ても、懐かしく、親しみが持てるのは、シアマ監督その人が「スタジオジブリの作品にインスパイアされた」と語っている世界観の作品であるからかもしれません。“秘密の森”のその向こうには“トトロの森”が広がっているのです。(鬼塚大輔・映画評論家、静岡英和学院大・常葉大非常勤講師)

 

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