テーマ : 福祉(障がい者・子ども)

原因探しやめて、回復へ【思春期の心 支える力 進学、進級を経て①】

 ゴールデンウイークが終わってから6月にかけて、不登校の相談が増えていきます。学校に行けなくなると、子どもも親も「どうして行けなくなったのか」と考えます。友達とトラブルになったとか勉強が難しくなったとか、さまざまな「原因らしきもの」を考えますが、そのほとんどが「きっかけ」であって「原因」ではないため、回復への糸口が見つかりません。そのうちに「学校に行けない自分は駄目人間ではないのか」と考えたりして苦しくなってしまいます。

蔭山昌弘さん
蔭山昌弘さん
矢野晶子さん
矢野晶子さん
蔭山昌弘さん
矢野晶子さん

 カウンセリングで私は「不登校は大半が原因不明です。だから原因探しをやめて、どうすれば回復できるかを考えましょう」と、回復への道筋を一緒に考えていきます。子どもたちには「この世の全ての人が駄目なところを持って生きています。だから自分に駄目なところがあってもいいのです。そんな自分をありのままに認めよう。そして、たとえ学校に行かなくても、夜、1日を振り返って一つでいいから自分を褒めてから寝るようにしよう」と話します。
 高校生くらいまでは人生の土台を作る時期です。だから、人と比較するのではなく、自分の人生の主人公は自分自身だと胸を張ってほしいのです。駄目なところがあってもいいと本当に思うことができると、それが長所に置き換わって見えてくることもあります。例えば「人前で話すのが不得手」と言う人が、「話の聴き上手」になったりするように。
 私は今まで四十数年にわたって、教壇に立ちながらカウンセラーを続けてきました。数多くの人たちの話を聴かせてもらってきましたが、そのほとんど全ての人たちが「回復する力」を自分の内に秘めていました。「ありのままの自分を受け入れる」ことが「回復する力」を発揮させる原動力になっているのです。では「ありのままの自分を受け入れる」にはどうすればいいのでしょうか、次回考えてみたいと思います。(蔭山昌弘/城内カウンセリング研究会代表)      ◇  国語教師として教壇に立ちながら、悩みを抱える子どもたちに寄り添ってきた蔭山昌弘さんが、混沌[こんとん]とした現代を生きる子と親にメッセージを送る。最初は進学、進級後の心に焦点を当てる。挿絵は御殿場市のイラストレーター矢野晶子さん。

 かげやま・まさひろ 1947年静岡市生まれ。2007年まで県内の公立高に勤め、カウンセラーとして延べ6000人の相談に応じた。日本学校教育相談学会県支部理事長。城内カウンセリング研究会代表。

 やの・あきこ 1982年御殿場市生まれ。日本大芸術学部卒。各地で作品展を行うほか、雑誌などの挿絵を手がける。

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