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もっと男性が育休を 取得率公表義務化 静岡県内80社対象

 4月から従業員千人超の企業を対象に、男性労働者が育児休業を取得した割合を年1回公表することが義務化された。対象企業は男性の育児休業取得割合もしくは育児休業に育児目的休暇を合算した割合のいずれかを、直近の決算期から3カ月以内を目安に自社ホームページなどで公表する必要がある。政府が男性の積極的な育児参画を促す中、企業や関係機関が取得環境の整備を進めている。

過去5年間の県内男性育児休業取得状況
過去5年間の県内男性育児休業取得状況


 静岡労働局によると、県内で公表対象となるのは約80社。村上開明堂(静岡市葵区)は2025年までに「男性育休取得率20%以上に引き上げ」を目標に設定した。同社が厚生労働省サイト「両立支援のひろば」に公表した22年度の取得率は17・4%で、17年の5・4%から大きく上昇した。
 人事担当者は「社内広報が功を奏した」と要因を分析した上で「パートナーの妊娠など社員の私的な情報を早期に把握できれば、制度説明などに対応がしやすいのだが」とさらなる取得率向上へ課題を挙げる。
 取得率公表による企業のメリットは何か。4月中旬、静岡市内で行われたオンライン会議で、妊娠・出産・育児の支援アプリ「ママリ」を運営する会社「コネヒト」(東京都)の高橋恭文代表(45)=沼津市出身=は「人材確保のチャンス」と強調した。育休取得体制が整う企業は、有能な人材の受け皿として採用活動で有利に働く可能性があることを指摘した。
 その一方で高橋代表は「公表義務化を意識した“取らされ育休”では意味がない」と数値だけを底上げして実際は子育てに参画できない事態が起こり得ることに警鐘を鳴らす。実態を伴った子育て参画に必要な要素として「出世に響く」「周囲に迷惑がかかる」といった現場の不安解消を挙げる。同会議に参加した産業医で産婦人科医の平野翔大さん(29)は「『育休取得は不利』という風潮をなくすため、取得者や関連部署を評価する仕組みがあってもよいのでは」と企業の対応に期待する。
 取得率向上に向け、静岡労働局雇用環境・均等室は、企業への訪問強化や雇用環境整備に関するセミナーの実施も検討している。小野聡室長(57)は「取得率向上には経営者の意識変革が重要。中小企業には『子育てパパ支援助成金』などの制度も有効に活用してほしい」と話した。

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