テーマ : 福祉(障がい者・子ども)

網の目のように支え合う【思春期の心 支える力 進学、進級を経て③】

 カウンセリングの場面で「生まれてこない方が良かったんだ」とか「自分は不必要な人間だ」などという言葉を耳にします。そういうとき、相談にみえた方の話をしっかり聴かせてもらった上で、伝えていることがあります。

(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)

 私は「人は皆、見えない糸で網のようにつながり合っている」と考えています。例えば困っている誰かの話し相手になって話を聴いて、その人が元気になって「ありがとう」と言ってくれると、自分の心がぽかぽかあたたかくなりますね。相手の「ありがとう」が見えない糸を伝わってこちらの心に届くからです。
 日本の諺[ことわざ]に「情けは人のためならず」というものがあります。かけた情けはぐるぐる回って自分を助けてくれるのです。ところが、この糸が目に見えないので自分が孤立しているように思ってしまうのです。だから、「皆網の目のようにつながり、支え合って生きているのですから、一人として不必要な人はいないのです」と話します。
 このことが納得できると、「駄目なところのある」自分でも、「網の目の一人として生きている」と分かってきます。さらに、このつながりあいの中に自分が存在しているということを実感させてくれる人がいると、「思い」が「確信」に変わります。その存在が「寄り添い人」。苦しいときに話を聴いてくれる人、不安なときに支えになってくれる人です。
 「寄り添い人」にはどの人もなることができます。ただし二つ条件があります。「相手の話をしっかり聴けること」と「自分にも駄目なところがあると理解し、気づいたら改めようとできること」です。これがあれば、子どもの苦悩を受けとめ、子どもが目を輝かせて自分の道を歩いて行けるように支える「寄り添い人」になることができると思います。(蔭山昌弘・スクールカウンセラー=静岡市葵区)

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