テーマ : 福祉(障がい者・子ども)

言い換えて「死」から離す【思春期の心 支える力 夏休み明けに向けて②】

 夏休み明けは子どもの自殺が多い時です。カウンセリングの場面で「死にたい」と言われたとき、まず苦しさや揺れる思いをしっかり聴いて受けとめます。その上で、「死にたいという言葉を別の言葉に置き換えるとしたら、どんな言葉になる?」と聞きます。

(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)

 子どもたちは「消えてしまいたい」「学校へ行きたくない」「苦しさを誰かに分かってもらいたい」「どこにも居場所がない」など、さまざまな言葉に置き換えてくれます。そこで「ではこれからは、死ぬっていう言葉を使うのをやめて、例えば苦しさを誰かに分かってもらいたいなどと、言葉を置き換えようよ」と話します。「死ぬ」という言葉を使わずに自分の苦しさやもがきの正体を理解することで、「死ぬ」意識から離れていくことができるからです。
 「死にたい」と口に出すときは、苦しみを訴える心の奥に、苦しさからの回復を図りたいという思いも隠れています。だから言葉を置き換えることで、状況を変えることも可能なのです。しかし、「死」を考えるのは心の奥に底知れぬ不安を抱えている場合が大半です。だから「寄り添う人」が必要です。「絶対に死なないでほしい。苦しくてたまらなくなったら、いつでもいいから連絡してほしい。必ず支えるから」と強く伝えます。
 一方、苦しんでいるのにカウンセリングをためらっている人の場合、心の不安を支える力は家族や友達の中にあります。「死」を口にされると、関わる人は止めようとして説得を試みます。しかし、まずは口を挟まずに話を聴くことです。「一人でもいいから自分の苦しみを分かってほしい」との思いをしっかり聴いて受けとめることです。
 「死」はいわば「心と状況」という回転する二つの歯車がピッタリ重なったときに起こります。だからしっかり聴いていると歯車の重なる時をずらすことができます。まずは「時」をずらして「聴いて受けとめる」ことが「寄り添う」第一歩だと思います。
 (蔭山昌弘・スクールカウンセラー=静岡市葵区)

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