テーマ : 美術・絵画・写真

感情と身体感覚を紡ぐ 画家・菅沢薫さん 浜松市鴨江アートセンター、木下恵介記念館で個展 28日まで

 浜松市鴨江アートセンター(中区)のアーティスト・イン・レジデンス(AIR)で昨年11月から滞在制作してきた画家菅沢薫さん(33)=同区=。旧警察署庁舎の一室がアトリエ、そして個展会場となった。

カラフルなストッキングを、複雑な感情の表現素材とする菅沢薫さん。浜松市鴨江アートセンター向かいの木下恵介記念館も会場となっている=同市中区(浜松総局・二神亨)
カラフルなストッキングを、複雑な感情の表現素材とする菅沢薫さん。浜松市鴨江アートセンター向かいの木下恵介記念館も会場となっている=同市中区(浜松総局・二神亨)

 高い天井から、自らが染めたストッキングが無数に垂れる。カラフルな透け素材に「性のイメージ」を内包させる。
 原点は学生時代に遭った下着泥棒という。「複雑な感情、そこから派生する身体感覚を象徴する表現素材」として描いてきた。束ねたり、引っかけたり。形状の自由度も大きい。画廊とは異なる表現を求め、今展覧会で初めてインスタレーションに登場させた。
 埼玉県出身。美術教師を目指して地元の大学に進んだが、相次ぐ祖父母の死で気力を喪失。死や人物をテーマにした制作にのめり込んだ。
 人の感情は、単純明快な言葉では表せない。「うれしいような悲しいような。笑っているような、うつろなような」。顔料に卵を混ぜるテンペラを、その機微を写し取る技法に選んだ。油彩との混合技法を用いながら、表情を繊細に描いていく。大学院では、画材の加工とその変化について研究した。
 4年前、浜松学院大短期大学部に職を得て浜松へ。昨年は長男を出産した。淡紅色のストッキングを、命をつなぐへその緒に見立てAIRの集大成に仕上げた。
 展覧会タイトルの「みちたりて―」は、願望と充足感を掛け合わせた。「人生はこの二つを行ったり来たりするのかもしれない。その過程で紡がれる感情を感じ取ってもらえたら」と期待する。

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