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音楽ホール「静岡バッハハウス」閉館へ 楽器、資料多数…奏者ら惜しむ声 静岡市葵区油山

 クラシック愛好家らが演奏の場として活用してきた静岡市葵区油山の音楽ホール「静岡バッハハウス」が、年内で閉館する。建物の経年劣化に加え、楽器のメンテナンスなどに多額の費用がかかることから、オーナーらが施設維持は困難と判断した。関係者に惜しまれながら、28年の歴史に幕を閉じる。

2階に設置されたパイプオルガンを紹介する杉山文朗さん=静岡市葵区の静岡バッハハウス
2階に設置されたパイプオルガンを紹介する杉山文朗さん=静岡市葵区の静岡バッハハウス
ピアノやチェンバロが置かれ、ステンドグラスからの陽光に照らされたステージ
ピアノやチェンバロが置かれ、ステンドグラスからの陽光に照らされたステージ
2階に設置されたパイプオルガンを紹介する杉山文朗さん=静岡市葵区の静岡バッハハウス
ピアノやチェンバロが置かれ、ステンドグラスからの陽光に照らされたステージ

 同館は1994年、元会社経営者のバッハ愛好家、故和田信一郎さん(同市)が開設したプライベートホール。ドイツ・アイゼナハのバッハ生家を模した2階建てで、ステージと垂直に床材を配置して音響効果を高めたホールが特徴。内部には和田さんのバッハへの思いがこもる。曲に欠かせないパイプオルガンやチェンバロだけでなく、珍しい鍵盤楽器クラヴィコードなどを常設。2階資料室には、楽譜全集やCD、FMラジオを録音したカセットテープなどのコレクションが並ぶ。
 「バッハの曲すべてを演奏する」という和田さんの方針の下、多くの演奏家が訪れ、多い年は少なくとも年4回の演奏会を開いた。和田さんが2014年に亡くなった後、しばらく使われていなかったが、オーナーである遺族の意向で18年からコンサートなどでの使用を再開した。同館サポーターとして演奏会を開くなどしてきた県クラシックギター愛好会主宰の杉山文朗さん(65)=同市駿河区=は「響きのよいホールなので、奏者の耳にも音が返り、心地よい演奏ができる」と話す。
 ここ数年で建物や設備の老朽化が目立ち始めた。楽器類も含め、将来的な維持管理を考えたオーナー側が、外部利用を終了する意向を固めたという。
 杉山さんによると、抜群の残響効果は演奏者の間で広まり、奏者側から「演奏したい」と連絡が来るほどだった。3日にリサイタルを開いたクラシックギタリスト岩永善信さん(68)もその一人。岩永さんは「寂しいが、和田さんの愛情が詰まったこのホールで閉館前に演奏できて幸せ」と閉館を惜しんだ。
 杉山さんは「和田さんの思いが込められた全国でもまれに見るホール。残された時間で最高の演奏を楽しんでもらいたい」と話す。
 

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