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テーマ : 事件事故しずおか

社説(12月29日)柿沢衆院議員逮捕 不祥事連鎖止まらない

 ことし2人目の現職衆院議員の逮捕だ。しかも政治資金パーティーを巡る自民党安倍派の裏金事件の捜査が進んでいるさなか。国民の信頼を回復するどころか、不祥事の連鎖に歯止めがかからない。
 2人は不祥事の疑惑が明るみに出た時点で離党したが、元は自民所属で政府の要職も務めた。党総裁でもある岸田文雄首相はこの事態をどう収拾するつもりなのか。生半可な対応では国民の怒りが増すだけだ。責任の明確化と再発防止の思い切った改革が不可欠だ。
 東京地検特捜部が、4月の東京都江東区長選を巡る公職選挙法違反の容疑で、前法務副大臣の柿沢未途容疑者と秘書4人を逮捕した。区長選で支援した木村弥生前区長の当選のため、選挙運動の報酬として区議ら5人に計100万円を提供した上、別の区議3人にも計60万円の提供を申し込んだ疑い。選挙期間中には、木村氏と共謀して投票を呼びかける違法な有料インターネット広告を約38万円かけて掲載したなどの疑いも持たれている。柿沢容疑者はこれまでの任意聴取で現金の提供は認めたが、「区議選の陣中見舞い」の趣旨だったとして買収の意図を否定している。
 9月には洋上風力発電事業を巡る汚職事件で、受託収賄の疑いにより秋本真利被告が逮捕され、その後、起訴された。事業者からは7200万円を超える賄賂を受け取ったとされる。新型コロナウイルス対策の持続化給付金に絡む詐欺罪でも起訴されたが、どちらの罪も否認している。
 2人の逮捕容疑や起訴内容が事実なら、民主主義の根幹である選挙と、国のエネルギー政策をカネでゆがめたことになり、国会議員としての適格性を欠いている。疑惑が発覚してから逮捕までに間があったにもかかわらず、明確な説明をしなかった点も非難を免れない。
 安倍派の裏金事件では、特捜部が柿沢容疑者の逮捕と並行して大野泰正参院議員の議員会館事務所を家宅捜索した。池田佳隆衆院議員(比例東海)の事務所に続いて2日連続だ。パーティー券の売り上げの一部について、派閥から多額の還流(キックバック)を受け、政治資金収支報告書に記載していなかった疑いが指摘されている。
 これらの不祥事を一部議員の行為と片付けることはできない。背景に自民のおごりや構造的腐敗がなかったと言えるのか。事件当事者の責任追及はもちろんだが、党や派閥の責任も明確にし、公選法や政治資金規正法の罰則強化と抜け道をふさぐための改正、派閥解消などの組織改革を抜きにして国民の信頼回復はあり得ない。岸田首相は肝に銘じるべきだ。

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