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テーマ : 事件事故しずおか

小林製薬 紅こうじサプリ問題 対応後手 不信の連鎖 公表に2カ月 被害拡大か

 小林製薬の「紅こうじ」サプリメントを巡る問題は重大な健康被害が懸念される事態となった。発生の把握から使用停止呼びかけに2カ月超を要し、判明した死亡事例は最近まで摂取を続けたとみられる。情報提供の遅れが被害の拡大を招いた恐れがあり、原料を供給した企業への連絡も後手に回った。機能性表示食品に対する信頼も揺らぎ、不信の連鎖を招いた。

小林製薬のホームページに掲載された、健康被害が相次ぐ「紅こうじ」を使ったサプリメントについてのお知らせ
小林製薬のホームページに掲載された、健康被害が相次ぐ「紅こうじ」を使ったサプリメントについてのお知らせ
小林製薬「紅こうじ」流通のイメージ
小林製薬「紅こうじ」流通のイメージ
小林製薬のホームページに掲載された、健康被害が相次ぐ「紅こうじ」を使ったサプリメントについてのお知らせ
小林製薬「紅こうじ」流通のイメージ


 1月15日、ある医師から小林製薬の代表番号に電話があった。「紅こうじサプリとの関連が疑われる症状で入院した患者がいる。サプリの成分を教えてほしい」。31日にはサプリを摂取した本人から、2月1日には別の医師からも同様の相談が相次いだ。

 原因不明
 小林製薬は当初、海外で被害の報告事例がある有毒物質「シトリニン」の存在を疑ったが、全く検出されなかった。アレルギー反応など他の原因を探ったものの特定に至らず、結局3月22日になって公表。原因究明ができないまま、使用停止を呼びかけるまでに2カ月以上が過ぎていた。
 小林章浩社長は2月6日の時点で、腎疾患の症例報告が複数あることを把握していたという。小林氏は3月22日に大阪市で開いた記者会見で「報告を受けた時点で何らかの形で回収になるだろうと覚悟した。当該の商品が原因となっているか分からず、判断ができなかった。遅いと言われれば、その通りだ」とうなだれた。

 金曜の夜
 小林製薬が紅こうじ原料を供給していた飲料や食品メーカーなどへの連絡も遅れた。22日の記者会見では、社外への供給について詳細な説明を避けた。報道各社からの問い合わせを受け、2日後の24日になってようやく、計52社に販売していたと明らかにした。
 紅こうじ原料の供給を受けていたメーカーによると、小林製薬から自主回収の要請があったのは会見開始後の22日午後6時半ごろ。多くの企業が通常業務を終える金曜夜というタイミングに、メーカー担当者は「なぜこれほど時間がかかったのか。1月に被害が判明したのならばもっと早く周知すべきで、対応が非常に遅い」とあきれた。
 このメーカーは22日夜から急ピッチで準備を進め、自主回収を公表した。「小林製薬が原因でも自社の製品である以上、丁寧に対応するしかない」とする一方で「紅こうじと無関係の商品についても『大丈夫なのか』と聞かれる。ブランドイメージの毀損(きそん)が不安だ」とこぼした。

 安全性
 機能性表示食品で初めての健康被害確認となった今回の事例。ある食品メーカー関係者は「食品会社より高度な根拠が求められる製薬会社でなぜ問題が起きたのか」と首をかしげる。表向きは論文データなどを消費者庁に届け出れば健康効果をパッケージに表示できることになっているが「実際には国が科学的根拠を丁寧に確認する」と話す。
 消費者庁は「国が安全や機能を認めたものではない」との立場で、国が効果や安全性を審査する特定保健用食品とは位置づけが異なる。
 機能性食品の制度が始まった2015年は、月間の届け出件数は多くても数十件だった。最近は200件近くになることも多く、表示の活用は増え続けている。国が安全性を担保しない制度で起きた健康被害は、今後の在り方に問題を投げかけている。

Q&A 紅こうじ サプリや着色に広く普及  小林製薬の「紅こうじ」成分を配合したサプリメントを継続摂取したとみられる人が腎疾患で死亡しました。

 Q こうじとは。
 A カビの一種であるこうじ菌を穀物に混ぜて発酵させたものをこうじと呼び、みそやしょうゆといった発酵食品を造るのに利用されています。

 Q 紅こうじは。
 A 紅こうじ菌を米に混ぜて発酵させたものです。赤い色素が特徴で、天然の着色料として食品や飲料で広く普及しています。

 Q サプリの機能は。
 A 紅こうじによる成分が悪玉と呼ばれるLDLコレステロール値を低下させるとする効果をうたっていました。

 Q 海外での扱いは。
 A 欧州では紅こうじ由来の有毒物質「シトリニン」に起因するとみられる健康被害が報告され、スイスでは紅こうじを成分とする食品や薬品の売買は違法とされています。

 Q 今回の原因は。
 A 紅こうじ由来の成分摂取で健康被害が出た理由は解明されていません。小林製薬は、製品にシトリニンは含まれていないと説明し「カビ由来の未知の成分」と推測しています。

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