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テーマ : 事件事故しずおか

映画助成金不交付「違法」 出演俳優逮捕巡り 製作会社、逆転勝訴 最高裁

 薬物使用事件で有罪が確定した俳優の出演を理由に、映画への助成金を交付しなかった文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」(芸文振)の処分の妥当性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)は17日、不交付処分を違法と判断した。処分を適法とした二審判決を破棄し、原告の映画製作会社側の逆転勝訴が確定した。芸術文化作品への公的な助成金の在り方に関する最高裁の初判断で、4人の裁判官全員一致の結論。
 映画は製作会社「スターサンズ」が手がけて2019年9月に公開された「宮本から君へ」。芸文振は出演俳優の有罪確定に伴い、内定していた助成金1千万円を交付しない決定をした。訴訟では国の事業として税金を原資とする助成金の交付が、公益に照らして妥当と言えるかが争われた。
 判決は、交付の判断に当たっては公益的観点が必要とする一方、交付の拒否が広く行われれば「表現行為の内容に萎縮的な影響が及ぶ可能性があり、憲法に基づく表現の自由の保障の趣旨に照らしても看過しがたい」と指摘。不交付とするには、重要な公益が害される具体的な危険があるかどうかを十分考慮すべきだとの枠組みを示した。
 その上で今回のケースを検討し、出演者の知名度や役柄の重要性にかかわらず、助成金を交付した場合でも「国が薬物犯罪に寛容だ」との誤ったメッセージが広がる事態は想定しがたく、薬物使用者が増加する根拠も見当たらないと指摘。「薬物乱用の防止という公益が害される具体的な危険があるとは言いがたい」として、不交付は芸文振側の裁量権の逸脱、乱用に当たると結論付けた。
 一、二審判決によると、出演者のピエール瀧さんが映画の完成した19年3月に逮捕され、7月に執行猶予付きの有罪判決が確定。芸文振はその後、不交付を決めた。一審判決は不交付を違法、二審判決は適法とした。

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