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テーマ : 事件事故しずおか

屋根瓦修繕費10倍超請求 静岡県警逮捕の男ら 「飛び込み営業」数十年前から横行

 必要のない屋根瓦の修繕工事を施し、費用を高齢者からだまし取ったなどとして、静岡県警に詐欺と特定商取引法違反(不備書面交付)の疑いで逮捕された神奈川県小田原市などの23~31歳の男7人が、修繕作業に安価な材料を多用していたことが28日、関係者への取材で分かった。利益を生むための工作とみられ、施工後は材料費を含む本来の経費の10倍以上を支払うよう、被害者に請求していた。三島署と富士署、県警生活保安課はグループによる被害総額が数千万円に及ぶとみて、詐欺行為を始めた経緯や動機を調べる。
 県警によると、グループは主に、雨漏り防止策としては効果がない「シーリング剤」を使った工法を多用し、必要のない施工を重ねていた。関係者によると、シーリング剤は一般的な修繕作業で複数本使うことは多いが、1本当たりの単価は数百円とされる。男1人で施工し、一日で作業を終える手口が大半だったにもかかわらず、1軒当たり50万~280万円を請求していたことが判明している。
 逮捕されたのは、指示役で仕切っていたとみられる屋根瓦修繕業の男(28)=小田原市=や自称建築業の男(29)=同=ら7人。位置情報アプリや秘匿性の高いアプリで情報共有した上、他の5人が60~90代の高齢者宅を事前連絡なく訪問する「アポ役」や、診断と称して屋根瓦を調べ「瓦がずれている。雨漏りする」と、うそを言う「点検役」や勧誘役、契約役、施工役などを手分けして担っていた。
 同様の被害は2021年2月以降、県東部をはじめ神奈川、山梨両県で100軒以上確認され、県内で多いのは富士や沼津、三島、裾野市など。グループが「グッドライフホーム」の事業者名を使い始めたのは今年1月ごろからで、それ以前は別の名称で詐欺行為を重ねていたとされる。
 三島署などは28日、7容疑者を両容疑で静岡地検沼津支部に送致した。  「飛び込み営業」に注意 悪徳業者近年増加
 瓦屋根の住宅を突然訪問し、不必要な工事を施して費用を請求する悪徳業者は数十年前から存在していた。「屋根工事」に関する県内自治体の窓口への相談は近年増加傾向にあり、県瓦屋根工事業連合会は「飛び込み営業は怪しい。屋根に上らせてはいけない」と注意を呼びかける。
 同連合会の村松昇会長によると、20~30年前から横行し始め、対応に苦慮しているという。手口は三島署などに27日逮捕された詐欺グループと同様に「瓦がおかしいよ」などと突然訪問して屋根を調査し、不必要な工事を施すという。村松会長は「調査の際にわざと瓦を割った上で『雨漏りする』と言う業者の話も聞いたことがある」と語る。
 逮捕されたグループの施工もずさんで、被害者宅を確認した県東部の瓦職人の男性は「瓦の特徴や工法を知らない施工だった」と憤る。瓦は上から下に水が流れるように積んであるが、「シーリング剤」を使用したために水の流れを妨げ、雨漏りの原因になっていた。修復する場合も「手間が倍になる。とりあえずやった感じだった。業界の評判が悪くなり、死活問題だ」と話す。
 県県民生活課によると、県内自治体に寄せられた相談は2019年度は106件だったが、20年度には194件と倍増。逮捕されたグループが活動し始めたとされる21年度以降も増え、22年度は266件に上った。さらに23年度4~8月は170件(前年同期比98件増)と急増し、詐欺事件の被害が確認されている東部が大半だったという。今回の端緒も同課相談窓口への通報がきっかけだった。
 同連合会によると、近年は施工を断ると脅されるケースも確認されている。雨漏りの不安をあおったり、保険の活用を促したりして誘導することもあり、「飛び込みの業者が来たら加盟業者に依頼し、相見積もりを取ってほしい。『今やるよ』には気を付けて」と注意喚起する。

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