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テーマ : 菊川市

多様化する生産・販売支援 研究、輸出 行政に重い役割 【令和の静岡茶㉛/終章 次代への胎動③】

 「たくさん人が来て、いいお茶づくりに向けて意見交換する場にしたい」。静岡県農林技術研究所茶業研究センター(菊川市)のプレハブ造りの仮設庁舎で、小林栄人センター長(58)は静岡県茶業の将来を見据えて語る。

取り壊しを控えた本館を眺める小林栄人センター長。敷地内では研究開発機能強化に向けた改修整備が進む=2月上旬、菊川市
取り壊しを控えた本館を眺める小林栄人センター長。敷地内では研究開発機能強化に向けた改修整備が進む=2月上旬、菊川市

 改修中の同センターは、4月に紅茶やウーロン茶など発酵茶の製造研究設備を備える新製品開発実験棟(オープンファクトリー)が部分開業する。フレーバーティーや茶濃縮液、粉末茶の試作に向けた装置も順次導入する予定で、先端技術を用い、嗜好(しこう)の変化に対応した商品開発に挑む。築50年超の本館は解体され、新時代に合った研究棟に生まれ変わる。
 同センターは1908年に県立農事試験場茶業部として発足し、本県茶業の発展を研究開発面で支えてきた。戦後は主力品種「やぶきた」の普及や、茶園大規模化に伴う栽培手法を探求し、日本一の産地としての地位確立につなげた。時は流れ、低コストのドリンク飲料向け茶葉の生産技術、香りや多収性に優れた品種開発、飲用以外の用途など研究テーマは多様化している。
 茶業復興に向けた行政の役割とは-。県は海外市場を意識した「静岡茶アクティブ有機栽培技術開発」に取り組む。農薬使用を抑えながら病害を防ぎ、収量と品質を確保するための課題に向き合う。有機肥料や土壌改良の研究、機械化による除草技術導入などを進めていて、小林さんは「輸出に活路を見いだす事業者のための技術として確立させたい」と思いをめぐらせる。
 茶の需要減少と並行し、農山村では生産者の高齢化が進む。茶業現場の維持が難しくなる中、県は2020年、茶業者や異業種、大学などによる会員組織「ChaOI(チャオイ)フォーラム」を立ち上げ、産学官で生産・販売振興に取り組む。「茶を新販路にPRしたい」「抹茶生産に挑戦する」といった事業案や知見が集まり、行政による伴走型支援で具現化させている。
 県や市町が留意すべきは「生産量の現状維持に努めるが、収益は悪化する」という負の連鎖に陥らないための対策だ。研究開発や補助金支給にとどまらず、農地の基盤整備や農道補修といったハード面の強化、生産効率化も含めて、意欲ある茶業者を支えるべき行政の役割は広く、重い。

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