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テーマ : 編集部セレクト

大自在(3月20日)荒れる春場所

 大阪で開催中の大相撲3月場所は、決まり文句のように「荒れる春場所」と言われる。ここ数年は春場所に限らず荒れ模様の土俵が続くが、55年前はまさに「荒れる春場所」だった。
 双葉山の不滅の記録69連勝に挑んでいた45連勝中の横綱大鵬が平幕の戸田(後の小結羽黒岩)に敗れる大波乱があった。行司軍配は大鵬に上がるも、物言いが付き、勝負審判の協議で行司差し違えとなった。
 ところが、翌日の新聞に戸田の足が先に土俵の外に出ていた写真が載ると、ファンも荒れた。日本相撲協会に抗議の電話が殺到した。「世紀の大誤審」をきっかけに翌場所からビデオ判定が導入された。
 史上最多45回の優勝のうち春場所で9回も賜杯を抱いた元横綱白鵬の宮城野親方が弟子の暴力問題で、2階級降格と減俸の処分を受けた。暴力を黙認、隠蔽[いんぺい]したとして師匠失格の烙印[らくいん]を押された。現役時代のいくつかの不適切な言動も改めて指摘された。
 その一つが、2017年九州場所の関脇嘉風(現中村親方)との一番。一方的に寄り切られたが、立ち会いの不成立を訴えなかなか負けを認めようとしなかった。攻め込まれた戸田との戦いを振り返り、「あんな相撲を取った方が悪い」と自らを責めた大鵬と対照的だった。
 優勝回数で尊敬する大鵬を抜き、親方になっても弟子の活躍が目立った。順調な相撲人生に謙虚さを忘れてしまったのかもしれない。モンゴル出身ながら日本の格言や名言を口にして多くの日本人を感心させてきた。「実るほど頭[こうべ]を垂れる稲穂かな」は知らなかったのか。

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