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エレバン国際版画ビエンナーレ展 異文化理解の「種子」に

 中央アジア・アルメニア共和国の首都エレバン市で「第4回エレバン国際版画ビエンナーレ展」が11月8日まで開催されている。その特別企画として「国際版画シンポジウム」が9月12日から3日間行われた。

アルメニア・エレバン市の「国際版画シンポジウム」でスピーチする澤田祐一さん(右)=9月中旬
アルメニア・エレバン市の「国際版画シンポジウム」でスピーチする澤田祐一さん(右)=9月中旬

 このイベントは作家同士の対話(ダイアローグ)を通じて版画に関するアイデアや経験を共有する目的で開かれ、14カ国から私を含む約20人の版画家が招聘[しょうへい]された。エレバン市のカスカードという名の丘の上に建つ会場からは、ノアの箱舟がたどり着いたとされるアララト山が見え、その姿が富士山に似ていることもあり、とても親近感を感じる環境であった。
 国籍も年齢も異なる版画家たちのプレゼンは内容も方法も多様で、版画という表現を通して見えてくる文化的背景の相違と共通性を語り合い、同時代の作家達の思いを傾聴し学び合う場となった。私はシンポジウム2日目に登壇し、「松の声を聴く」と題して、三保の松原との出合いから生まれた版画シリーズ「松にふれて」の40年間の展開と、自然との対話から生まれた日本の文化や美術作品を紹介した。
 これまでもさまざまな海外展に参加する機会があったが、今回のような形での作家主体の対話の場に参加するのは初めてで新鮮な体験であった。IT先進国アルメニアにおいて、ネットではないリアルな作家同士の対話にフォーカスを当てた今回のシンポジウムは、グローバリズムと分断とが混じり合う不協和音の時代において、芸術表現の相互理解を促す重要なターニングポイントになるのかもしれない。
 版画が異文化理解のための「種子」になることを実感するアルメニア滞在であった。
 (版画家、社会福祉法人ハルモニア理事長、島田市在住)

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