あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 編集部セレクト

「児童会館」からの出発 新モデル掲げ、ビル内に【科学を楽しむ 静岡る・く・る20年㊤】

 全国に先駆けた「ハンズ・オン(体験型)」展示や、地方館としては珍しい活発な科学コミュニケーター活動で知られる静岡科学館「る・く・る」が21日、2004年の開館から20年を迎える。誕生の経緯を振り返り、地域社会の科学リテラシーを高める取り組みを検証する。 開館の7年前、1997年に策定された基本構想・基本計画に、監修者の一人でノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈さん(99)は、新しい科学館に求められることとして、次の言葉を寄せた。「サイエンスの本質を一般市民によくわかってもらえる、そして実践に繋がる展示であり、運営であり、事業展開です」(同計画から抜粋)

開館後初の大型連休を迎え、混雑する2004年5月3日の静岡科学館。この日は5675人が入場
開館後初の大型連休を迎え、混雑する2004年5月3日の静岡科学館。この日は5675人が入場

 基本計画は「科学館の新しいモデル」を掲げ、重点施策に「多面的な展示空間」「大型のサイエンスショー」「外部協力者の交流広場」などを挙げる。現在の館のありように極めて近い姿がすでに提示されている。開館直後の館長で、市立中学校長を経て再度館長に就任し、2012年度まで務めた増田俊彦さん(76)=静岡STEAM教育研究所シニアメンター、焼津市=は「『子ども科学館』という仮称は付いていたが、『最新のサイエンスを伝える場』という考えでつくられた」と振り返る。
 現在の駿府城公園内にあった市立児童会館(1957年開館)の老朽化が科学館設置の議論の出発点だった。公園内の単独館を目指したが曲折の末、95年にJR静岡駅南口の再開発ビル内の整備が決まった。先行開館した静岡音楽館AOIとともに、駅周辺のにぎわい創出を期待されての決定だったという。民間ビルの3床を用いる科学館は地方都市では異例だった。
 2019年度までは、年間15万人という市の目標値を上回る年間20万~25万人が訪れていた。だが新型コロナウイルス禍に見舞われた20~21年度は来場者数が大幅に減り、23年度も完全に戻りきってはいない。増田元館長は「『体験をベースにした学び』という根幹を失うことなく、少しずつ新しい展示や施策も取り入れてほしい」と話し、ハード・ソフト両面のアップデートを願った。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

編集部セレクトの記事一覧

他の追っかけを読む