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名門俳優座 存在感と勢い 1944年設立「伝統と革新」の80年

中村圭吾演出版「スターリン」
 新劇の名門、劇団俳優座が2月に創立80周年を迎えた。古典から翻訳劇、現代劇まで幅広く手掛け、仲代達矢や平幹二朗ら多くの名優を輩出。近年も上演作品や団員が次々と主要演劇賞に輝くなど、老舗ならではの存在感と勢いを並立させる。

 設立は1944年。文学座、民芸と共に戦後の演劇界をリードした。創設メンバーで、劇団の支柱となった演出家の千田是也は、独劇作家ブレヒトの戯曲や演劇論を日本に紹介し、自ら演技論も執筆。演劇学校である俳優座養成所(後の桐朋学園芸術短期大演劇専攻)や、俳優座劇場も整備し、優れた俳優と作品が生まれる土壌を築いた。岩崎加根子代表は「今まで続いてきたのも千田先生の教えがあったからこそ」と功績を振り返る。
劇団の今後について「一人ひとりが自分のできることに心から取り組むことが大切」と語る俳優座の岩崎加根子代表=東京・六本木の俳優座
 近年は、75年生まれの演出家、真鍋卓嗣らが外部でも活躍。2017年には若返りを敢行し、40~50代が中心を担う体制に。伝統を守りつつ、革新的な試みにも目を向ける。
 80周年記念の公演ラインアップもテーマは「伝統と革新の共生」。ブレヒト、イプセンらの古典に、日本初演の翻訳劇、劇団外の若手・中堅劇作家の書き下ろし作と多彩な演目がそろう。
 2月に上演した「スターリン」(ガストン・サルヴァトーレ作)では、演出に次代を担う若手3人を抜てき。ベテラン俳優陣と組み、旧ソ連の独裁者の虚像と実像を描き出す戯曲を全く異なる三つの演出で立ち上げた。
 30歳の中村圭吾演出版に出演した90歳の川口敦子は「研さんを積んだ若手が並ぶのは新たな出発。時代を鋭敏に捉え、走っていける人が増えれば」と期待する。岩崎代表も「劇団のこれからを担う人たちがその時々の時代を表現していくことが大切」と力を込める。草創期から劇団と歩みを共にするベテラン俳優の川口敦子(左)と中野誠也
 一方で、長年作品発表の場となってきた俳優座劇場が25年4月で閉館が決まるなど、舞台芸術を取り巻く環境は厳しい。俳優として入団し、21年に劇団運営会社の社長に就任した有馬理恵は悔いを明かしつつ、いつか劇場も再建し「劇団・劇場・養成所の三位一体でまた新たな時代を切り開きたい」。「伝統と革新」の精神で、次なる節目に向けて布石を打ち続ける。
劇団での芝居作りについて「初めから団員との信頼関係があるのは大きい」と話す演出家の真鍋卓嗣

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