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浜名湖ボート事故12年 亡くなった女子生徒の父、追悼行事初参加へ

 浜名湖で2010年、静岡県立三ケ日青年の家(浜松市北区)のボートが転覆し愛知県豊橋市立章南中1年の女子生徒=当時(12)=が亡くなった事故は18日、発生から12年を迎える。青年の家で同日開かれる追悼行事に、女子生徒の父(63)が初めて出席する。事故の教訓が風化する危機感から「娘の命を無駄にしてほしくない。私が直接訴えたい」と参加を決めた。
 事故当初は「浜名湖を見るだけで心が落ち込んだ。雨が降っていたら悔しさと怒りがこみ上げ、近づけなかった」という男性。20年に59歳で亡くなった妻は、最後まで浜名湖を見ることができなかった。毎年6月18日には、娘が大好きだったカルボナーラを自宅で作るなど「同じ時間を過ごしてきた」。
 娘の命日に現場を訪れる決意を固めたのは「薄れていく記憶を思い起こさせる」という使命感から。教員や県職員、施設職員は年月とともに異動などで入れ替わり、行事が徐々に形式化していく不安がぬぐえないという。「組織に循環は必要だが、教訓を伝えることに節目や終わりはない。子どもの命を預かる立場を自覚してほしい」との思いを強くしている。
 女子生徒が生きた12年間と同じ月日が経過した。浜名湖を目にしながらでも、心の痛みと再発防止を願う気持ちを切り分けられるようになったという。当日は、自らの声と言葉で思いを伝える。「娘は何も悪くないのに、大人の言うことに従った結果命を落とした。事故の背景や当時の判断を改めて考える機会にしてほしい」。
 県教委社会教育課の藤ケ谷昌則課長は「メッセージを直接いただくことで、事故を二度と起こしてはいけないという思いを関係者全員で共有したい。青少年教育施設の安全への取り組みを強固にする日とする」と述べた。

 浜名湖のボート転覆事故 2010年6月18日、三ケ日青年の家で海洋活動中の豊橋市立章南中1年生ら20人が乗ったカッターボートが悪天候の中で航行不能となり、えい航中に転覆。ボートに閉じ込められた女子生徒が死亡した。出航時、大雨、雷、強風、波浪、洪水の注意報が発令されていた。15年、業務上過失致死の罪で元所長に有罪判決が言い渡されたが、学校側の刑事上の過失は認定されなかった。

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