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御殿場市印野地区で探検!霊峰の“胎内” 御胎内清宏園、噴火が生んだ神秘の洞窟【わたしの街から】

横倒しになった樹木の型が残る「印野の溶岩隧道」(通称・御胎内)の入り口 雄大な富士山の麓に位置する御殿場市印野地区。過去の噴火の影響が色濃く残る溶岩地帯の変化に富んだ地形と富士山麓の豊かな自然が調和する。富士山学習の絶好の場である地区の魅力を一度に感じることができるのが、国指定天然記念物の洞窟「印野の溶岩隧道[ずいどう]」がある富士山御胎内清宏園だ。洞窟は「御胎内」との通称で親しまれ、子宝のパワースポットとしても人気が高い。
 御胎内の呼称は「U」の字形の洞窟の形と溶岩が冷え固まった岩肌の様子が、人間の体内に似ていることに由来する。洞窟内に胎内神社の前殿、本殿、奥殿に当たる石祠[せきし]があり、祭神として富士山の守り神で安産、子宝の神でもある木花開耶姫命[このはなさくやひめのみこと]と猿田彦命[さるたひこのみこと]を祭る。江戸時代を中心に明治、昭和初期にかけて富士山を霊場とする修験道の行者や富士講信仰者が訪れ、御胎内で身を清めた。洞窟外の同神社の社殿にも安産祈願者が集まる。
人体の中に見立てた「御胎内」の洞窟内部洞窟内にある胎内神社の本殿  静岡県や同市教育委員会によると、400年代の古墳時代中期、富士山東側の側火山である北赤塚、赤塚、馬ノ頭から噴出した溶岩流が樹木を巻き込み、幹や枝が焼け消えた結果、固まった溶岩の中に円筒形の空洞が残ったという。洞窟を保存するため1927年、国の天然記念物に指定された。
溶岩地帯の上に長い年月をかけて形成された豊かな森林 園内は1707年の富士山宝永大噴火により埋まった溶岩地帯に、長い年月を経て樹木が茂り、変化に富んだ豊かな森を形成している。フジザクラやヤマツツジなど四季折々の花々が彩り、ナラの美林や富士、愛鷹、箱根山系に特有の高山植物なども見られる。多種の野鳥が飛来し、約11ヘクタールの「野鳥愛護林」で地元印野小の児童たちが独自の野鳥愛護活動に励む。
 同園を管理する印野郷土振興協会の勝間田政道理事長は、「園内はナラ枯れの影響で森の一部を伐採し、現在は再生に向けた植栽活動などを続けている。今後も自然や歴史を大切に継承していきたい」と語る。
 〝お産〟道のりは難所続き 記者が体験  入り口から続く「父の胎内」は岩肌が特徴的。小腸部、大腸部と進む全長約68メートルの御胎内を通過する通称「胎内くぐり」を記者も体験した。はいつくばって進む区間もあり、“お産”までの道のりは想像以上に大変だった。
 洞窟内は入り口から前殿までは父の胎内とされ、中腰で小腸、大腸、五臓部を通過する。難関なのは後半の母の胎内。ほふく前進で「子返り」を抜けると、安産のジンクスがある「安産石」や肋骨状の溶岩の光景が広がる。ほっとしたのもつかの間、出口前の難所「産口」はまさに「おぎゃー」と声を上げたくなる狭さと険しさだ。
 洞窟の壁面は溶岩の波紋がはっきりと確認でき、地点によって種類や形状、質感も異なる。途中の石祠も含め、洞窟の貴重な環境を肌で感じることができた。
 山芋香る締めの一品 みくりやそば
そばと山芋の香りが口いっぱいに広がる「たくみの郷」の御殿場みくりやそば  御殿場市の家庭に古くから伝わる「御殿場みくりやそば」。大みそかや正月、祝いの場でのごちそう、締めの一品として振る舞われる家庭料理だ。①麺に山芋・自然薯[じねんじょ]を使う②自家製麺もしくは市内で製麺③麺や汁に御殿場の水を使う-が定義という。
 印野地区のそば処「たくみの郷」は、地元産のそばや鶏肉、野菜を中心とした昔ながらの御殿場みくりやそばを提供する。麺は12人前でソバ600グラム、小麦粉400グラムに対し、山芋を800~900グラム入れる。ふんわりとした食感の手打ち麺からソバと山芋の香りが広がり、神奈川県や都内からのリピーターが多いという。毎週土曜日のそば打ち体験は、日本文化に触れようと外国人も参加する。
 大庭千春工房長(46)は「御殿場の大切な食文化を守っていきたい。そば打ち体験などを通じ、担い手も育ってくれたら」と話す。

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