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大自在(4月3日)あほうかしこ

 正月も15日、言われて鏡餅を神棚から下ろした駆け出し落語家が師匠に問うた。「お餅にどうしてカビが生えるんでしょうか」「ばかやろう、早く食わねえからだ」。
 餅のカビは見れば気付く。「紅こうじ」サプリメントから青カビ由来の「プベルル酸」が検出されたと発表があった。小林製薬は分かってからも当初は「未知の成分」としか言わなかった。健康被害が相次ぐ腎臓への影響は不明というが、情報開示の不手際はサプリ市場全体に不信が広がりかねない。
 冒頭のやり取りの下っ端は林家木久扇さん。師匠は、後に彦六と改名した八代目林家正蔵(1982年没)。「新・彦六伝」をCDで聴いた。
 木久扇さんは「笑点」を先の日曜の放送で卒業した。86歳。彦六師匠が亡くなったのと同じ年齢での勇退となった。落語には与太郎が登場する噺[はなし]が幾つもある。頭の巡りは鈍いが、親孝行だったり腕のいい職人だったりする。
 木久扇さんは番組創成期から55年にわたって与太郎の役回りを務め通した。日曜の放送で「ばかは同じ失敗を繰り返す。もっとばかは、それを恐れて何もしない」と、木久扇さんの解答は含蓄に富んでいた。
 「笑われる」「笑わせる」の違いは大きい。多芸な木久扇さんは漫画家、実業家としても活躍し、実像は「実に穏やかなインテリ」なのだそう(三遊亭円丈「落語家の通信簿」)。愚かに見せて内実は賢明な人を関西で「あほうかしこ」と言うという。失言を繰り返した川勝平太知事が辞職表明した。京都出身の川勝氏ならご存じだったと思うのだが。

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