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夢の万博、赤字に懸念 協会、柔軟な運営課題 関係企業アンケート

 未来への夢や希望を描く万博だが、開催には巨額の費用を要する。2025年大阪・関西万博で来場者数が想定を大きく下回れば、赤字による国民負担増の懸念が現実化する。関係者は盛り上げに懸命だが、結果的に損失が出た場合の負担に企業は神経をとがらせる。日本国際博覧会協会(万博協会)の運営柔軟化も課題となりそうだ。
大阪・関西万博に向け工事が進む大阪市の人工島・夢洲=4日万博が赤字だった場合の費用負担
 草の根
 昨年12月7日の参院経済産業委員会では、赤字になった場合の対応に厳しい質問が飛んだ。西村康稔経産相(当時)は「国として補塡(ほてん)することは考えていない」と発言。赤字に陥ることのないよう、万博協会を監督していくと強調した。
 共同通信が実施したアンケートで、参加企業・団体に黒字化に向けて取り組むべきことを聞くと「国内の機運の盛り上げ」が89%で最も多くなった。関西の経済団体幹部は、公式キャラクター「ミャクミャク」のピンバッジを着けて東京に行った際「ミュウミュウでしたかね」と聞かれ、知名度を高めるための草の根活動の必要性を強く感じたという。
 三菱総合研究所は来場意向や関心度を尋ねるアンケートを定期的に実施している。昨年12月に公表した調査では、全国で「行きたい」と答えた人は26・9%となり、過去3回の調査と比べて最も少なくなった。関心度についても「大いにある」「まあある」の合計は27・4%と最少で、万博熱は高まっていない。
大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」(2025年日本国際博覧会協会)

 火種
 会場整備費と運営費の合計は3千億円を超える。このうち運営費は大半を入場券収入で調達する方針で、万博協会は来場者数を愛知万博の実績などを基に、約2820万人と想定した。この数字について企業は「妥当な想定」と62%が回答した。レジャー産業に詳しい桜美林大の山口有次教授は「最終的には達成できると考えているが、若干高めの目標値を設定したという印象だ」と指摘する。
 仮に最終的な収支が赤字になった場合、損失の分担が国、大阪府・市、企業の3者にとって火種となりかねない。企業は「国と大阪府・市による補塡」との回答が36%と最も多くなった。アンケートで4割超の企業が入場券を購入するとしており、すでに負担が重くなっている実態も透ける。

 マインド
 「ミャクミャクなどコンテンツの使用に細かな規定があり、使用しにくい」。こうした不満の声も自由記述で寄せられた。成功に向け協会と企業が一致して取り組みを強化すべき局面で「企業や自治体、個人が協力できる枠組みをつくってほしい」との要望もあった。実際、ある参加企業の関係者は企画の相談を万博協会にしたところ、しゃくし定規な対応に「あぜんとした」と明かす。
 海外パビリオンの建設遅れや増額した会場整備費など暗い話題が続き、機運醸成を阻害してきた。農機大手のクボタは「関係者が成功させようというマインドを持ち取り組むことが必要」と訴える。前向きな情報発信が必須とする企業は多い。
 愛知万博では開幕当初の来場者数が少なくなり、閉幕直前に殺到したことが反省点だった。山口教授は「会期中の来場者数を高い水準でならすためにも周知を徹底し、今から全国的な盛り上がりをつくることが重要だ」と強調した。開幕は来年4月13日だ。

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