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大自在(3月28日)円安

 外国為替市場で円安が進み、1990年7月以来、約34年ぶりの安値をつけた。日銀はマイナス金利政策の解除を決めたが、植田和男総裁が「当面、緩和的な金融環境が継続する」との見方を示し、急激な金融引き締めへの市場の警戒感が薄らいだようだ。
 「歴史的」とされる最近の円安は米国などとの金利差が直接的な要因だが、国内輸出産業の衰退やデジタル技術・サービスの立ち遅れなど国力の低下が根底にあるとも指摘される。円安の恩恵で好業績の企業も多いとはいえ、物価高にあえぐ庶民としては先行きが不安だ。
 その「円」の歴史をさかのぼってみる。始まりは明治政府が1871年に制定した新貨条例。当時の表記は「圓」だった。新通貨誕生の背景には、幕末に諸外国との交易が始まったことに伴う混乱があった。
 当時、日本と外国で金と銀の交換比率が異なったため、通貨が交換されるようになると、大量の金貨が海外へ流出。さらには財政難の幕府が貨幣を改鋳したことなどで質の悪い貨幣や偽貨幣が横行し、インフレが進んだ。
 明治政府に新通貨の創設を提案したのは、後に大蔵卿を務めた大隈重信ら。名称は、それまで楕円[だえん]や方形が多かった貨幣を外国貨幣にならって円形にしたことや、中国でメキシコ銀貨が「銀圓」と呼ばれていたことが由来とする説が有力だ。
 円の誕生は経済近代化の象徴と見ることもできる。ことし7月には、大隈と共に通貨政策にも携わった渋沢栄一らの新紙幣が登場する。「失われた30年」を経た日本経済復活の象徴になるかどうか。

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