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熱川照らす台湾提灯 「被災地支援に関心を」 東伊豆温泉街、観光地の九份再現

 東伊豆町の温泉街、熱川地区で台湾の観光地を模した景観づくりが進んでいる。地形に共通性があり、世界的にも知られる九份(きゅうふん)を模し、現地と同じ「台湾提灯(ちょうちん)」を常設した。6日からの本格的な点灯開始を前に台湾で大きな地震が発生し、関係者は「来訪者に現地の支援に関心を持ってもらうきっかけにしたい」と願いを込める。九份の街並み。提灯の赤い明かりがともる=1月、台湾
 1日夜の伊豆急行伊豆熱川駅前。関係者が提灯の点灯状況を最終確認していた。「赤い光が幻想的でしょう。日本にいながら台湾の雰囲気が味わえる」と語るのは、熱川温泉旅館組合の池田亮馬さん(33)。地区内に約800個の明かりをともす。地域一帯で海外の特定地域に着想を得た町おこしは全国的にも珍しいとみられる。準備を進める池田亮馬さん(右)ら。「湯けむりと提灯の共演を楽しんで」と呼びかける=1日夜、東伊豆町奈良本
 九份は映画「千と千尋の神隠し」の世界観とイメージが重なる場所として広く知られる。同組合や町によると、すり鉢状の地形と広さが似通っていて、2023年に町関係者が観光PR目的で現地を訪問した際、熱川にも提灯が映えるのでは-と着想を得た。
 「熱川に、九份が灯る」と題し、台湾観光庁や台湾観光協会の協力も取り付けた。提灯は台湾から直輸入した。悪天候の日を除き6日以降は毎日提灯を点灯させる。同日午後7時からは同駅前で点灯式を開き、台湾料理の屋台や中華獅子舞で来訪者をもてなす。
 プロジェクトの背景には深刻な来訪者減がある。組合によると、1970年代にはテレビドラマの舞台となり、79年度は年間80万人超が訪れた。以降は団体から個人の旅行への流れなどで減少が続き、2022年度はコロナ禍からの回復傾向にはあったが、約30万人だった。
 同組合の石島正和さん(38)は取り組みが観光客の夜の散策につながり、飲食店の活性化や宿泊客増に直結すると見据える。その上で「まだ台湾の地震の全体的な被害状況は見えてこないが、継続的にイベントを実施する中で東伊豆からできることはないか模索したい」と話した。
 (下田支局・伊藤龍太)

 熱川温泉 室町時代に武将太田道灌が狩りの最中にけがを負った際、発見したのが起源との説がある。肌の新陳代謝を促すとされる「メタケイ酸」が豊富で、一般的な温泉の4倍もの含有量を誇るため「美肌の湯」とも称される。全国トップクラスのおよそ100度の源泉温度で、源泉を掃除するための「温泉櫓(やぐら)」が名物。

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