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碾茶炉増設、来春稼働へ 天竜の農事組合法人 処理能力4割増 県産抹茶 海外需要下支えに

 浜松市天竜区の農事組合法人「天竜愛倶里ふぁーむ」は今年、抹茶原料となる碾茶(てんちゃ)工場の設備を増設する。来年春に稼働予定で、処理能力4割増を見込む。県西部一円の農家から茶葉を集め、安定品質で生産する仕組みを構築していて、輸出ニーズが高まる県内産抹茶の生産を下支えする。

(提供写真)天竜愛倶里ふぁーむのレンガ造りの碾茶炉。同じ建屋内に増設する=4月上旬、浜松市天竜区
(提供写真)天竜愛倶里ふぁーむのレンガ造りの碾茶炉。同じ建屋内に増設する=4月上旬、浜松市天竜区

 今年秋から熱で茶葉を乾燥させるレンガ造りの碾茶炉などを整え、生葉の年間処理能力を130トンから183トンに引き上げる。総事業費は約1億円で、半額分国の補助を受ける。
 工場には同区春野町や袋井、掛川など広域から生葉が寄せられ、碾茶に加工して製茶問屋に出荷。問屋が抹茶に仕上げて各地に販売する。各茶園で使う肥料や栽培法の指導を重ね、効果的な収穫計画を組むことで品質を安定させてきた。大石道則組合長は「茶園を一つ一つ見て回り、摘採時期を見極めている」と話す。
 海外で抹茶の引き合いは強い。2023年の緑茶輸出額のうち、抹茶や粉末茶など「粉末状のもの」は前年比46・6%増の216億円と急伸した。各国で菓子や飲料、健康食品の材料として需要がある。同法人は売り先の要望に応じ、農薬基準が厳しい欧州各国の規格に合った茶作りに努めるなど、世界基準への対応を進めている。
 大石組合長はペットボトル茶の普及や煎茶の販売単価低迷を見据えて2008年、同法人を立ち上げた。碾茶の販売価格は安定基調で推移しており、「既存設備では生産が追いつかない状況。増設でニーズに応え、品質向上を進めていく」と話す。茶工場に茶葉を出荷する農家の中には碾茶栽培向けに改植したり、有機栽培に取り組んだりする動きがあり、地域茶業の維持発展に向けた好循環が期待できそうだ。
 (天竜支局・平野慧)

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