あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 編集部セレクト

分水嶺違法開発と砂防法焦点 静岡県内部検証 7日、報告書公表【熱海土石流】

 熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、県議会の要請を踏まえて県が未検証の行政対応を対象にした内部検証の報告書が7日の県議会常任委員会で公表される。第三者委員会で検証されなかった砂防法の運用と分水嶺(れい)の違法開発の実態がどこまで明らかになるのかが焦点。不適切な複写で写真が読み取れなくなっていた行政文書をどう評価したのかも注目される。

砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」に関連した県の行政対応※公文書の記載に基づく
砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」に関連した県の行政対応※公文書の記載に基づく
情報開示請求で開示された県の内部検証文書。「事実関係」「制度の概要」の一部が黒塗りになっている
情報開示請求で開示された県の内部検証文書。「事実関係」「制度の概要」の一部が黒塗りになっている
砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」に関連した県の行政対応※公文書の記載に基づく
情報開示請求で開示された県の内部検証文書。「事実関係」「制度の概要」の一部が黒塗りになっている


 ◆不透明な内部議論
 内部検証は関係法令を所管する課長が議論する形式で、専門家や第三者は入っていない。県議の一人は「県が自ら情報を出し、徹底した検証ができるのかが試される」とみる。ただ、県は初回を除き議論を非公開とした。本紙が議事録や会議資料を情報開示請求したところ、県は「混乱を生じる恐れがある」と資料に記した事実関係の一部を黒塗りにした。議事録も初回以外は「未作成」とし、検証過程は不透明だ。
 検証が不十分と識者に指摘されているのは土石流を防ぐ目的があった砂防法の行政対応。県は1998年、逢初川で砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」を申請した際、国土交通省から上流域の指定を求められた。同意を得ようと地権者と協議したが「管理された植林帯」を理由に逢初川源頭部の指定を先送りした。

 ◆指定の必要性認識?
 国交省の不法盛り土対策の作業部会委員を務めた北村喜宣・上智大教授(行政法学)は取材に「県が上流全体を砂防指定地に含めるべきと考えたからこそ(地権者への)同意取得を試みたはず。(98年の時点で)指定の必要性は認識されている」と説明している。
 県が当初、白黒で公開して読み取れなかった行政文書の写真がカラー化され、03年以降に分水嶺をまたいで盛り土が造成されたことも分かった。国は指定基準として開発区域や開発予想区域を挙げていて、基準に該当していたとみられる。内部検証では当時の担当職員にヒアリングしていて、職員が指定の是非をどのように検討したのかも注目される。
 (社会部・大橋弘典)

 熱海土石流の内部検証 盛り土を規制する権限のあった県が検証の対象。2022年に報告書をまとめた第三者委員会は県の方針に従って06年9月以降の行政対応に検証対象を限定。検証する法令も市に権限のある県土採取等規制条例に重点化し、県に権限のある砂防法の対応を十分検証しなかった。県議会は特別委員会を設けて専門家から意見を聴取。検証不足と認定し、砂防法など関係6法令の検証を県当局に求めた。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

編集部セレクトの記事一覧

他の追っかけを読む