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人口減少対策 「転職移住」の評価定着【持続可能な都市へ 浜松市23年度予算案㊤】

 2月上旬。オンラインの画面越しに、東京都内から浜松市へ移住予定の20代カップルへ浜松商工会議所の三浦弘和さん(45)と市の移住コーディネーター宮嶋千恵美さん(50)が丁寧に聞き取りを重ねる。「希望に合う企業リストをすぐに作ります」「住居選びは渋滞や駐車場代も考えた方がいいですよ」

オンラインで都内の移住希望者の相談に応じる三浦弘和さん(左)と宮嶋千恵美さん=2月上旬、浜松市中区の浜松商工会議所
オンラインで都内の移住希望者の相談に応じる三浦弘和さん(左)と宮嶋千恵美さん=2月上旬、浜松市中区の浜松商工会議所
浜松市の将来人口予測(市統計より)
浜松市の将来人口予測(市統計より)
オンラインで都内の移住希望者の相談に応じる三浦弘和さん(左)と宮嶋千恵美さん=2月上旬、浜松市中区の浜松商工会議所
浜松市の将来人口予測(市統計より)

 市と商議所が力を注ぐ“職住セット”の支援事業は就職先候補のリスト作成から面接日の設定、住居探しまでを一貫して寄り添う。「仕事は未定だが、移住したい」という関東圏の人に好評だ。相談窓口となるメッセージアプリLINE(ライン)の友だち登録は6千人を超えた。三浦さんや宮嶋さんら支援チームは現在、100組ほどの相談に対応している。
 コロナ禍のテレワーク普及や大都市圏の物価高を背景に地方移住者は急増した。2021年度に県外から同市へ移住した人は前年度の約2倍の128人。首都圏との2拠点移住が可能な県中東部に数は劣るが、企業の多さと手厚い支援で「転職移住なら浜松」との評価を固めつつある。
 住宅取得や転居の費用を市が最大100万円助成する「ハマライフ住宅取得費等助成事業」は22年度の利用が当初想定の約4倍の220件に迫る見通し。市は23年度当初予算案で助成枠を拡充したほか、移住・就業支援金の子ども加算を1人30万円から100万円に引き上げ、移住コーディネーターは1人増の3人体制にするなど、関連経費2億4800万円を盛り込んだ。将来を担う子育て世代を確保する狙いがある。
 21年に都内から中区へ子ども2人と移り住んだ大学教員広瀬正剛さん(45)、英未さん(42)夫妻は宮嶋さんの案内を受けながら、市の移住者交流会、子育て支援団体の行事などで友人を増やした。「人とつながれる安心感が一番の支援だと思う」と実感を込める。
 22年に妻と2人で都内から天竜区に移った自営業川上大介さん(40)は市の「お試し居住施設」で暮らしながら、市内での古民家購入を検討している。近所の人の温かさに触れ、「いずれは自分も地域を支える側になれれば」と夢を描く。ただ、気に入った古民家があっても改修で多額の負担が必要な物件ばかり。市の助成でも賄いきれず、「改修費がかさまないよう家屋を管理する仕組みがあれば、郊外の移住者も増えるはず」と考える。
      ◇
 「持続可能な社会への挑戦」と銘打った浜松市の23年度当初予算案は、若者の移住促進やデジタル化による利便性向上など、地域課題を創意工夫で乗り越えるためのソフト事業が目立つ。現場の取り組みを追った。
 (浜松総局・宮坂武司)

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