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【自治体の非正規職員】行政の担い手、不安定雇用 低待遇にハラスメントも

 自治体の非正規職員を取り巻く環境は厳しい。雇用は不安定で、突然の雇い止めが後を絶たない。待遇の低さやハラスメントの問題も深刻だ。今や職員の5人に1人が非正規。行政運営に欠かせない存在と言え、改善が急がれる。

記者会見で、雇い止め撤回を求めるスクールカウンセラーの女性=5日、厚労省
記者会見で、雇い止め撤回を求めるスクールカウンセラーの女性=5日、厚労省
記者会見で、契約更新上限の撤廃を訴えるスクールカウンセラーの女性=5日、厚労省
記者会見で、契約更新上限の撤廃を訴えるスクールカウンセラーの女性=5日、厚労省
自治体の職員構成
自治体の職員構成
記者会見で、雇い止め撤回を求めるスクールカウンセラーの女性=5日、厚労省
記者会見で、契約更新上限の撤廃を訴えるスクールカウンセラーの女性=5日、厚労省
自治体の職員構成

 ▽部品
 「非正規でも誇りを持って働いてきたのに…」。2月上旬にオンラインで開かれた記者会見。東京都立学校のスクールカウンセラーとして約20年間働き、2023年度末で雇い止めとなった女性は声を震わせた。
 都教育委員会は、会計年度任用職員の契約更新は4回までと定める。5回目からは試験を受けなければならず、女性も新規の採用希望者に交じって面接を受けた。勤務成績は良好で上司も継続雇用を望んでいたが、1月下旬に届いた通知は不採用。わずか10~20分の面接で24年度は年収の3分の2を失う。
 支援団体によると、都のスクールカウンセラーの定員約1500人のうち250人が契約を更新されないといい、教育現場への悪影響も予想される。別の女性は3月上旬の記者会見で、ストレスで耳が聞こえにくくなったと明かし「私たちは駄目なら取り換えればいい機械の部品じゃない。一人一人に生活がある」と更新上限の撤廃を訴えた。
 ▽不適切
 21年公表の自治労調査によると、非正規職員の90%近くは年収300万円未満で平均額は224万8千円。人件費を抑えるため、1日の勤務時間をフルタイムより15分だけ減らし、パートタイムにする自治体も珍しくない。
 自治体が年度途中で職員給与の引き上げを決めた場合、年度初めの4月にさかのぼって増額する。しかし別の労働組合である自治労連によると、自治体の30%超は非正規に限って翌年度に先送りしていた。総務省が「不適切」とする手法だ。関係者は「財政が厳しく、制度の穴を突いてでも賃金を抑えたい自治体がある」と話す。
 立場の弱い非正規の多くは女性で、ハラスメント被害も集中しやすい。当事者団体の調査では、68・9%がハラスメントや差別を受けたと回答。別の調査では70%強が仕事を失う不安やストレスを抱えていた。
 ▽脱法
 非正規職員数は、23年4月時点で74万2725人と過去最多を更新した。全職員に占める割合は05年の13・0%から20・9%に増加。財政難で正規は減っており、置き換えが進んだ形だ。
 総務省も対策に乗り出し、今年4月からは、ボーナスに当たる期末手当と勤勉手当の両方を支給できるよう法律を改めた。昨年末には過去の経験を加味して待遇を定めることや、ボーナスを出す代わりに月給を減らすといった対応をしないよう全自治体に求めた。
 同省幹部は一時的な業務増への対応や短時間勤務のニーズを満たすため、非正規職員は必要だと指摘する。その上で「仕事や働き方に見合う待遇が前提で、ハラスメントはどんな職でも許されない。『脱法的』な扱いには厳しく対応する」とくぎを刺した。

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