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【次期戦闘機】殺傷武器、輸出拡大顕著に 「平和国家」変容

 政府が高い殺傷能力を持つ戦闘機の輸出に踏み切った。殺傷武器を含めた防衛装備品の輸出拡大が一層顕著となり、憲法の理念を礎とした「平和国家」の姿は変容。公明党を懐柔するため設けた歯止め策は実効性に懸念が残る。自民党では国防族を中心に安全保障環境の改善のためとして、さらなる制限緩和を狙う向きもあり、紛争を助長する不安は拭えない。

次期戦闘機輸出の政府決定と課題
次期戦闘機輸出の政府決定と課題

 ▽実態乖離
 「厳格な決定プロセスを経ることで、平和国家の基本理念を堅持する」。木原稔防衛相は26日の記者会見で英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国輸出を解禁しても日本のスタンスは不変だと強調した。ただ実態は乖離しつつある。
 日本は憲法が掲げる「平和主義」の精神を踏まえ、かつて武器輸出三原則に基づき事実上の全面禁輸を基本方針としてきた。しかし2014年に安倍内閣が防衛装備移転三原則を新たに閣議決定。「積極的平和主義」の立場から、従来の禁輸政策を撤廃した。
 岸田内閣もこの流れを踏襲。22年に策定した新たな国家安全保障戦略で「防衛装備移転の推進」を明記した。23年12月には、外国企業の許可を得て製造するライセンス生産品の輸出を解禁し、地対空誘導弾パトリオットの対米輸出を決めた。
 ▽色濃い演出
 輸出制限のルール緩和が進む一方、紛争を回避するための歯止め策が十分に機能するかどうかは不透明だ。
 政府は戦闘機輸出に際し、個別案件ごとに閣議決定することで手続きを厳格化したと説明する。だが審査は与党だけで完結し、国会関与の仕組みはない。閣僚経験者は「当初、輸出に慎重だった公明への配慮を形にしただけだ」と明かす。
 岸田文雄首相が強調する「三つの限定」も公明の同意を得るための演出の側面が色濃い。今回は対象を次期戦闘機のみとしたが、第三国輸出が必要な共同開発案件が生じたら、政府は与党と事前に協議し追加できる。自民の小野寺五典元防衛相は「何の制約もないということだ」と言い切る。
 輸出先も日本が防衛装備品輸出に関する協定を新たに結べば、対象が現在の15カ国から将来増える可能性がある。
 ▽危険な大転換
 輸出先が戦闘国になる危険性は否定できず、戦闘機が適正に管理されるかどうかは大きな課題となる。輸出解禁により、他の武器輸出のハードルは下がりかねない。実際、自民の国防族は防衛産業の基盤維持も理由に前のめりだ。
 今回の決定を巡り、立憲民主党の岡田克也幹事長は「憲法の理念に完全に穴があいてしまう」と指摘。共産党の穀田恵二国対委員長は厳しく批判する。「国会を無視した暴挙で、日本の在り方を大転換する危険な道だ」

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