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【大川原化工機訴訟】長期勾留問題、改めて露呈 識者「拘置所医療改善を」

 噴霧乾燥装置メーカー「大川原化工機」の元顧問相嶋静夫さん=当時(72)=の遺族が拘置所の対応を巡り損害賠償を求めた訴訟は、否認すれば身体拘束が長引く「人質司法」の問題が改めて浮かぶ。21日の東京地裁判決は拘置所の医療対応の違法性を認めなかったが、一貫して無実を訴えた相嶋さんが検査を受けられず、長期勾留の末に死亡した事実は重い。識者は拘置所の医療環境の改善が必要だと強調する。

請求が棄却され、記者会見する「大川原化工機」元顧問相嶋静夫さんの長男(奥右)ら=21日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ
請求が棄却され、記者会見する「大川原化工機」元顧問相嶋静夫さんの長男(奥右)ら=21日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ
請求が棄却され、父の遺影を前に記者会見する「大川原化工機」元顧問相嶋静夫さんの長男。左は遺族側代理人の高田剛弁護士=21日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ
請求が棄却され、父の遺影を前に記者会見する「大川原化工機」元顧問相嶋静夫さんの長男。左は遺族側代理人の高田剛弁護士=21日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ
請求が棄却され、記者会見する「大川原化工機」元顧問相嶋静夫さんの長男(奥右)ら=21日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ
請求が棄却され、父の遺影を前に記者会見する「大川原化工機」元顧問相嶋静夫さんの長男。左は遺族側代理人の高田剛弁護士=21日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ

 ▽対照的
 「裁判所の保釈判断が変わらなければ、治せるはずの患者が治らないということが起き続ける」。判決後、東京都内で記者会見した遺族側代理人の高田剛弁護士は、保釈が認められなければ、一般的な医療を受けられない現状を問題視した。
 相嶋さんは逮捕、起訴後の2020年9月には、東京拘置所で体調が悪化して輸血処置が行われ、同10月に胃がんと診断された。それでも保釈請求は退けられ続け、勾留執行停止中の21年2月に亡くなった。計8回にも及ぶ保釈請求は最後まで実現しなかった。
 21日の判決と対照的に拘置所の問題点に触れたのは、大川原化工機側が捜査機関の責任を問うために起こした別の訴訟で東京地裁が昨年12月に言い渡した判決だ。
 捜査の違法性を認定する中で、特に相嶋さんについて「長期間にわたり身柄を拘束され、被告人の地位のまま死亡した」と説明。違法な逮捕と勾留請求で「ただちに医療機関を受診できないなどの制約を受け、不安定な立場での治療を余儀なくされた」と言及した。
 ▽弊害
 相嶋さんは逮捕前、継続的に血液検査を受けていたが、逮捕・勾留で続けることが難しくなったという。21日の会見に同席した相嶋さんの長男(50)は「医療の継続ができないという部分でも、人質司法の弊害が出ている」と話し、慎重な勾留判断が必要だと訴えた。
 刑事施設の医療に詳しい龍谷大の赤池一将教授(刑事法学)は、配置される医師数や診療の質が不十分だとし「医療は本来、患者の健康を目的とすべきなのに、刑事施設では勾留の維持や刑の執行のためのものになっている」と批判。「社会一般の医療と同等にするという法律があるのに、勾留に耐えられるなら治療や検査は十分されず、人道上問題だ」とし、拘置所での医療の在り方を再考すべきだと指摘した。

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