【米大統領選】米政権と州、移民巡り対立 テキサス強硬策で揺さぶり
米国境に記録的な数の移住希望者が押し寄せる中、バイデン民主党政権と、共和党が主導する南部テキサス州の対立が先鋭化している。政権の移民対策に不満を募らせた州側は独自の流入阻止措置を講じ、国境管理を担う連邦政府職員を締め出す強硬策に打って出た。１１月の大統領選に向けて注目が高まる移民問題。寛容姿勢を掲げたバイデン大統領にとっては「アキレス腱」で、共和党は揺さぶりを強める。
▽「侵略」
「テキサスが国境を守る措置を取るのは、バイデンが何もしないからだ」。アボット州知事は２月、Ｘ（旧ツイッター）で訴えた。
２０２１年３月、アボット氏は「不法移民や麻薬密輸との闘い」を表明すると、国境地帯に州警察や州兵を増派し、国境に流れる川沿いに有刺鉄線を張り巡らせた。
それでも中南米出身者を中心とした不法越境者は増え続け、昨年９月末までの１年間に過去最多の２４７万人が南部国境で拘束された。アボット氏は同月「国境が侵略されている」と宣言。大統領返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領の看板政策だった「国境の壁」建設も推進する。
連邦最高裁は今年１月、連邦機関による有刺鉄線撤去を認めた。だが設置自体は禁じておらず、州は「撤去されたらまた置くまでだ」と主張し、いたちごっこの様相に。障壁としてブイを川に浮かべ、不法移民の逮捕や強制送還を可能にする州法を制定。異を唱える政権との法廷闘争が続く。
▽「違憲」
メキシコ国境に接するテキサスの小さな町、イーグルパスには昨年１２月、最多で１日に約５千人もの不法越境者が出た。川沿いのシェルビー公園は亡命申請などに向けた移民の待機場所に様変わり。これを見た州は今年１月、公園を突如管理下に置き、連邦政府の国境警備隊を排除した。
そのわずか２日後、不法移民の母子３人が川で溺死する事故が起きた。国境警備隊は公園に入れず救助活動ができなかったと説明。政権は国境管理や移民政策は連邦政府の専権事項だと訴え、公園占拠は「違憲だ」と非難する。これに対し、アボット氏は「連邦機関は州を守る憲法上の義務を果たしていない」と一歩も引かない。
調査会社ギャラップが１月に実施した世論調査で、バイデン氏不支持の理由のうち最も多かったのは不法移民対策（１９％）だった。アボット氏は２月、共和党の州知事１３人を公園に集め「バイデン氏が引き起こした大惨事から国を守る」とアピールした。（ロサンゼルス共同＝井上浩志）
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